第36話 ホームレス伝説になる(番外編・後世の歴史家視点)
後世の歴史家は、当時滅亡寸前であったヴォルフスブルク王国の不死鳥のような復活についてこう語る。
※
帝国歴51年ヴォルフスブルク帝国大学歴史学教授"イマヌエル"氏のインタビューより引用
「ヴォルフスブルク王国の復活においては、3人の英雄が大きな役割をはたしたとされます。まず、君主であるウィルヘルミナ女王。彼女は、大政治家として国家の近代化や外交などで列強国と互角に渡り合い、ウィルヘルミナ体制という新しい国家秩序を確立させました。次に、ヴォルフスブルクの閃光といわれたアルフレッド将軍ですね。彼は、まさに名将として数多くの戦場で戦い抜き、ほとんどの戦場で勝利しました。閃光と例えられるほどの迅速な用兵は後代の軍事学に大きな影響を与えています」
『イマヌエル教授は、もう一人の英雄を最も評価していると聞いていますが?』
「はい。もう一人の英雄であり、最も謎が多い男が"クニカズ・ヤマダ"将軍です。彼の前半生ははっきりしていません。当時のヴォルフスブルク大主教に認められて、ヴォルフスブルク軍に入隊し、メキメキと頭角を現していきました。前述のアルフレッド将軍との決闘で圧勝し、特例で入学したヴォルフスブルク軍事大学では、机上演習において無敗を誇ったとされます」
『無敗ですか!?』
「ええ、さらに驚くべきことは、その破った相手に、当時のヴォルフスブルク軍の戦略についての最高権威とも呼ばれたポール第1作戦課長が含まれていました」
『まさに、一学生が、作戦の最高責任者に勝ってしまったのですね』
「ええ、彼が結成したチームは1643年マフィアとして、その後のヴォルフスブルク王国を代表とする将軍たちを次々と輩出したことでも有名ですね。いまだに、あの不敗のチームは伝説となっています」
『聞けば聞くほど、傑物という印象が強まります。軍事的な才覚だけでなく、人を見る目もあったのですね』
「彼は軍事的には天才でした。ゲリラ戦・砲兵戦の史上屈指の大権威といわれています。彼が体系化し晩年に著述した『ゲリラ戦』や『ランチェスター戦略による砲兵の運用について』は軍事学の古典的な名著と言われており、没後200年以上経過した現代でも教本に採用されていますからね。同時代に生きて、彼の親友であり側近中の側近であったクリスタ輸送軍最高司令は、彼の印象について「クニカズは、瞬く間に作戦を完成させていた。そして、それはすべて理にかなっていた」と語っております」
『クリスタ司令以外の同年代にはどのように評価されていたのですか?』
「彼ほど、愛称が多い将軍はおりません。女王からは「わが友」とも呼ばれていましたし、ほかにも「クニカズの前にクニカズなく、クニカズの後にクニカズなし」、「智謀湧くが如し」、「軍神」、「戦争の歴史を300年縮めた男」など……」
(以下、インタビューは続く)




