第31話 ホームレス、権威と戦う
「それでは、ただいまより演習を始める」
ついに、はじまったな。
今回のフィールドは平原中心だ。騎兵の機動力と攻撃力が生きやすい。
「クリスタ大尉。事前に話しておいたように、多めに物資を前線に動かしてくれ!」
俺は頼れる相棒にそう依頼する。
「わかった。例のものを多めにね!」
「うん」
クリスタ大尉には国中の目当ての物資を前線に移動してもらうように依頼してある。これが切り札だ。
「アリーナ大尉は、想定される戦場に対騎兵陣地の構築を頼む」
「わ、わかりました。頑張ります!!」
ピンクの髪を振り乱しながら、彼女はクリスタ大尉と打ち合わせをしながら陣地の構築を開始した。柵などを使った簡易的な防御陣地だが、その有効性は長篠の戦いなど歴史が証明している。
しかし、こっちの世界に来てからずっと防衛ばかりしているよな。弱小国だから仕方がないとはいえ……
「ターニャ大尉は、各地域の情報から敵の侵攻方向を予想してくれ。敵の進路は逐一連絡して、敵との決戦個所を確定させたら、資源をそこに集中する!」
「もう、やっています。敵は、Aルートに侵攻中。物資中継地は、ルーア砦が最適です。そこに資源を集めてください」
資源はいくつか中継地を用意して、敵の進軍方向を反映させて柔軟に集める方式を取っている。コンビニエンスストアとかでも使われている輸送方式だ。これはクリスタ大尉の発案なんだけどな。異世界チート抜きで、ロジスティクスの有力な方法を思いつくなんてこいつは完全に天才だ。
『相手はゲリラ戦の使い手だ。進軍スピードはできる限りゆっくりおこなう。ゲリラが隠れにくい平原ルートを進むぞ』
向こうの声が聞こえてきた。やはり、相手はゲリラを心配しているな。だが、その作戦は放棄している。今回は正面からの正攻法で倒す。
今回用意された戦力は同数。3万5千対3万5千。
兵科の組み合わせはある程度、自由に選べるので、その選択肢が運命を分けるだろう。
向こうは騎兵中心。こっちは歩兵と砲兵中心の構成にした。
「アリーナ大尉! 敵はAルートに侵攻したから、例の作戦を頼む」
「わ・わ・わかりました」
まずは、お互いに心理戦になる。俺たちはできる限りの時間を稼ぎ陣地の構成を目指すつもりだ。
※
―ポール大佐視点―
「ポール大佐。最前線の索敵部隊から連絡が入りました。進軍方向の北西の高台に、敵の軍旗を確認しました。本隊が来襲した可能性が!!」
「なんだと!?」
早すぎる。本来ならば会敵の可能性は、侵攻から1週間はかかるはずだ。まだ、2日目だぞ!?
どうやった。武装もほとんどつけずに騎兵で移動してきたのか?
それはリスクが高すぎる。何を考えるているんだ。あの異世界の男は……