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第29話 ホームレス、称賛される

 俺は前回の机上演習の総括をおこなうために教壇に立った。

 学生だけじゃなく、現役の将官や佐官クラスの軍人たちも、俺の総括を聞くために授業に参加している。アルフレッドの姿も見えた。やばい、これはめちゃくちゃ緊張する。


「というのが、前回の机上演習の流れの簡単な説明です。今回の私たちのチームの狙いを箇条書きでまとめると、この3点に集約されます」


①自軍の犠牲を最小限にした遅延戦闘を繰り返した撤退作戦


②地形を生かした防衛戦闘によって敵主力部隊の戦力と物資を同時に消耗させる


③敵軍を自国領土内奥深くまで誘いこんだ後に、国境付近の山岳に潜ませていた伏兵を用いたゲリラ戦による補給路遮断


「このうち、最も重要なことは①の撤退戦です。この撤退戦で時間を稼ぐことができなければ、②の防衛陣地構築がままなりません。さらに、②のための防衛陣地を構築するためには物資の無駄がない輸送も重要になってきます。よって、この作戦を成功させるカギは、前線部隊・防衛部隊・輸送部隊――各部門の柔軟な協力関係を構築することにあります」


 俺が総まとめに入ると、教室内は拍手がまき起きた。


 アルフレッドは満足そうに俺に向かってウインクしながら、感想を言った。


「なるほど、いままでバラバラに戦っていた部門間を有機的に結び付けて、敵の最も弱いところを突くのか。補給路は、侵略戦争ならばどうしても長く伸びなければいけませんからね。長くなればなるほど守り切るのは難しくなるし、補給部隊は軽装だ。さすがは女王陛下も認めた異世界の英雄ですな。本来は負け戦になりやすい撤退戦すらも勝利をつかむためのひとつのピースになっている」


「ありがとうございます」


 今回の授業を聞きに来ていた将軍たちも笑っている。


「すばらしい戦略眼だ、クニカズ大尉」


「まさに、我が国の救世主ということだな」


 なんだか気恥ずかしいな。平和な日本だったら、ゲームの時くらいしか使わない知識だし。

 それがこんなに評価されるなんて、不思議な感覚だよ。


「それでは、今日の机上演習に入ろう。クニカズ大尉のチームと今回は特別に編成されたポール大佐のチームで戦ってもらう。ポール大佐は、我が国きっての戦略論の研究家として名高い軍人だ。おそらく、クニカズ大尉と互角に戦えるのは彼くらいしかいないだろうからね。前回は、防衛戦を基本としていたが、今回は会戦が中心となるシナリオを作成している」


 俺は配られた資料を眺める。たしかに、今回の戦闘領域は狭いな。戦力もほぼ互角。沼地のような大軍の移動が難しい場所も少ないし……


 この環境なら軍隊同士が中央から戦わなくてはいけなくなる状況か。

 うん、王道展開。


 小細工があまりできない状況をどうするか……

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