第267話 世界の命運をかけたドッグファイト
俺はなんとか接近を試みる。触手がムチのような動きで、こちらを攻撃してくる。魔力を込めたダンボールの楯が自立した動きでそれを防ぐ。
「神の楯。悪魔のくせに、生意気にも神を名乗るな」
「俺は神なんかじゃない。悪魔でもない。ただの元ニートの英雄だ」
「ニート? 何を言っているの?」
「俺は皆に支えられてここに立っている。俺のために死んだ人もいる。守れなかった人もいる。でも、皆が俺を信じてくれるから、ここに立てている」
「そうやって、お前はすべてをだます」
「騙しているのはわかっている。だが、俺は理想に近づくために頑張った。この2度目の人生ではな」
触手の攻撃をギリギリでかわす。
俺は、高速で移動する敵の後方に回り込むことに成功した。
だが、今の戦闘機でも後方に攻撃は可能になっている。戦闘機よりもさらに柔軟に運用できる航空魔導士にとっては、後方を取ることは、もはや勝利には結びつかない。
アリーナは触手や魔力を使ってこちらを攻撃する。だが、俺はそれをシールドを使って対処する。
「アリーナ。楽しくはなかったか? 俺たちと過ごした学生生活は……一緒に目的に向かって努力した日々は? 俺たちはたしかに同じ時間を共有していた」
「……」
「お前が敵だと分かっても、感謝している。だから、俺の手で終わりにする」
「勝手なことを言うな。お前が召喚されたことで世界は変わってしまった。お前がいなければ、父は死なずに済んだかもしれない。すべてお前が……」
言い終わる前に、俺の威嚇射撃が偶然にも触手を直撃する。
「ちぃ」
「これで終わりだ」
速度が落ちて狙いやすくなったアリーナに向かって連続攻撃を仕掛ける。
だが、触手によってそれらはすべてはじかれてしまう。
「もうやめて!!」
リーニャの声が響いた。




