第257話 自爆
「自爆するつもりか!?」
『ふふ、神の力の一部を使っている私のすべての魔力を解き放てば、ここにいる両軍のすべては吹き飛ぶわ。そうすれば、ここに最精鋭部隊を集結させていて、余力がないあなたたちの負けよ。こちらには、まだ精強な本国軍と言う予備戦力がある』
「やめろ、そんなことをすれば、新しい悲劇が生まれるぞ」
集結している魔力の総量を考えれば、アリーナの言っていることは正しい。おそらく、アリーナの魔力総量が同時に爆発すれば、少なく見積もっても戦術核兵器クラスの破壊力を持っているはずだ。数万人から数十万人をすべて吹き飛ばし、この高原は荒野に帰する。
さらに、こういう攻撃方法があると認知されてしまえば、悪用されかねない。悲劇は連鎖をはじめることだってあり得る。
ここは絶対に止めないといけない。
『すべての悲劇は、お前たちのせいだ。神の詔に反したお前らには、神の雷がもたらされるんだ』
だめだ、説得は意味がない。俺は攻撃を重ねる。
『無駄よ、その程度では、意味がないっ!!』
すべてが弾かれてしまい、打つ手がなくなっていく。すでに、消耗していた俺には限界に近い。
「魔力を空中に集中!! クニカズを援護しろ」
「今からの時間は、歴史の行く末を分かつ数分間になります。ここが歴史の転換点。皆の者、クニカズに続きなさい」
アルフレッドとウイリーの声が聞こえた。
地上からの対空砲火が、アリーナに向かう。数の力で、アリーナが作り出した防御壁を徐々に崩していく。
『このうじ虫どもが!!』
怒りによって冷静な判断力を失ったアリーナが地上へ攻撃を仕掛けた。巨大な爆発が地上で発生したが、地上の味方はひるまない。
無理に攻撃を仕掛けたことで、完全に防御力を失ったアリーナに対して、俺は追撃する。
『あっ……』
そして、自分のミスに気付いたようだが、もう遅い。
俺の魔剣は、アリーナを確実にとらえている。もう逃げることはできない。
『この悪魔たちめっ……』
アリーナは爆炎に包まれて、ゆっくりと地上に落下していく。
ロダン高原の決戦は、こうして終わりを告げる。大陸戦争は最終局面に入った。




