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第255話 決闘

「ついに来たわね、悪魔めっ!!」

 アリーナは、今まで戦ってきたどの魔導士よりも力をみなぎらせて、俺と対峙していた。


「どうして、俺をそこまで憎む? 少なくとも俺は、お前を友人だと思っていたんだぞ」


「友人? 笑わせないで。私は最初からお前たちを利用するつもりで近づいた。お前は破壊者だ。神はそう言っていた。さっきの攻撃でもわかる。お前がこちらの世界に来なければ、生き続けることができた命がいくつあったと思う!? お前はそれを踏みにじった。万死に値する」


『ダメです。私たちの時代とは違って、こちらではまだ神秘主義的な価値観が根強いんですよ。だから、もうひとつのアカシックレコードは、神として世界に介入できる。それに、アリーナさんは……』


「お前が来なければ、世界は違う方向に行った。父も母も死なずに済んだ。死ね、お前たちだけは全員殺してやる」


 アリーナは、何もない空間から突然、剣を作り出す。こちらも魔剣で応戦した。強烈な魔力同士のぶつかり合いによって、アリーナの記憶が俺へと流れ込んでくる。


 走馬灯のような記憶の束が、断片的な映像となってフラッシュバックされる。


 ※


「お父様、お母様。どうして……」


「どうやら、国王陛下暗殺未遂事件に巻き込まれたそうだよ。まだ、一人娘のアリーナさんも幼いのに、かわいそうに」


「死んでしまいたい。どうして、幼い私をひとりにするの。神様がいるなら、どうしてこんなに苦しい私を救ってくれないの?」


『ならば、お主の願いをかなえてやろう。10年後、この世界には異世界から悪魔によって、英雄を詐称する破壊者が導かれる。その破壊者の来訪する運命が、お前の両親を殺したのだ。お前に力を授ける。その力で悪魔を排除しろ』


 ※


「私の記憶を勝手に読むなあぁぁぁあ」

 彼女が作り出した魔剣の先はまるでムチのようにしなり、俺に襲いかかる。

 エイギス・モードでなければ、おそらく簡単に撃ち落とされていた。


「お前の生きる理由は、恨みか」


「上から目線で、私を見るな、この悪魔がっ」


 たしかに、奏を失った俺は世界を憎んだ。憎しみによって、セピア色の世界だけがずっと続いていた。アリーナにとって、それが人生のほとんどだったとしたら……


 それはあまりにも……


 悲しすぎる。そして、その残酷な運命を用意したもうひとつのアカシックレコードに対して怒りがこみあげてくる。


「死ね、クニカズっ!!」

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