第252話 賽は投げられた(クニカズと妖精)
ここは?
俺は目を覚ますと、医務室のような場所だった。
「よかった、目覚めましたね? モード:エイギスで力を使い果たして倒れちゃったんですよ。だから、ここに運び込まれたんです」
妖精は俺のベッドの横にいた。
「ターニャ!! よかった、無事だったのか」
「センパイのせいですよ。あそこで終わるつもりだったのに……あなたが、強引にルールを変えてしまった。あのまま、センパイが神に匹敵する力を手に入れることができたのに。戦争だって、今後のことだってなんでも自由にできたんですよ?」
俺は目を閉じて思い返す。そして、それでも自信をもって断言できた。
「お前が……ターニャが……奏がまたいなくなった世界で生きようとは思わない。神になるなんかよりも、お前を守ることができたことを、俺は自信をもってよかったと思うんだ」
「ばか、あなたは本当にバカですよ。世界の選択権を握るよりも、私を選ぶなんて……」
「お前を助けることができなくて、世界なんて救えるわけがない。奏ともう一度会えることができた。それだけでも、転生した意味があったと思うよ」
「……婚約者がいるのに、どうしてっ」
「次に会えた時は、お前を絶対に守ると決めていたんだよ」
俺はベッドから立ち上がった。
「どこに行くんですか、そんなボロボロの体で……」
「まだ、戦いは続いているんだろう。アルフレッド達のことだ。きっと戦況をうまく進めているはずだけど……俺も戦う」
「やめてください、センパイ」
「大丈夫だよ、お前たちを残して死ぬわけにはいかない」
俺は力強く、地面を踏みしめる。おそらく、現在、天王山の戦いが行われている。これが今後の歴史における分水嶺だ。命を懸ける価値がある。
「さぁ、いくぞ、奏……」
俺はルビコンを渡る決断をする。賽は投げられた。




