第250話 ゲリラ作戦
「ネール将軍、こちらが優勢に戦況を進めています。敵の塹壕の3分の1を奪取しています。このままいけば、敵の最終防衛ライン突破も考えられます」
「うむ。アルフレッドと言う将軍は優秀だと聞いていたが、塹壕から決して出てこないな。決戦せずにただ策もなく持久戦か? 期待はずれすぎる」
「しょせんは、若造です。クニカズと言う戦略の柱が崩れたことで、もう何もできなくなったのではないでしょうか」
「そうだといいが……」
だが、ここで恐るべき報告が入った。
さきほどまで楽勝モードだった司令部が凍りつく。
「閣下、補給兵団より連絡です。昨夜未明、敵ゲリラの攻撃により、旧ザルツ公国領にあった3つの倉庫が炎上しました。弾薬庫を中心に攻撃されてしまい、しばらくの間、弾薬の供給量が……」
「なんだと!? 弾薬がなければ、塹壕の突破はおろか、維持すら難しいんだぞっ!!」
「やられた……」
「閣下?」
「我々は完全にやられたんだよ、幕僚諸君。今までゲリラが発生していなかった場所にまで、ゲリラが発生した。つまり、やつらは"エアボーン"を成功させたことになる」
「エアボーン?」
「少数の航空魔導士が、空中から敵領内に入り込み、ゲリラになって後方かく乱する作戦だよ。しまった、クニカズは軍事大学時代に、ゲリラ戦と輸送についての権威だったはずだ。あいつらめ、それを準備し、アルフレッドが引き継ぎ実行したのかっ」
このままでは補給を失い、孤立する。
「撤退する。まだ、弾薬があるうちに、速やかに旧ザルツ領まで下がれ」
下手に深入りすれば、地獄を見るはずだ。ならば、損切りは早い方がいい。
「閣下大変です!」
「次はどうした!?」
「航空偵察兵より入電。高原東部に、新たな敵影です」
「どこの部隊だ!! 敵の東部方面軍か?」
「いえ、中央軍近衛騎士団です。さらに、敵の中央には、ヴォルフスブルク皇帝の軍旗が翻っております」
「……負傷中の女帝、自ら戦線に出てきたのかっ!?」




