第25話 ホームレス、部屋を襲撃される
「素晴らしい指揮だったな、クニカズ大尉。もはや、キミの指揮は私のレベルを超えているとしかいいようがない。感服したよ。次回の講義では、今回の机上演習の振り返りをしたいんだが、キミの口から解説も頼みたいんだがいいかな?」
教官は、どうやら寛容なひとらしいな。長年のプライドもあるだろうに、俺の指揮を完全に受け入れていた。
「はい、教官。今回は、俺がもといた世界の知識を使ったので! それに今回の結果は俺よりもクリスタ大尉の役割の方が大きいです。彼がすばらしい後方支援をおこなってくれたからこそ、この作戦がすべてうまくいったわけで……」
「同僚を褒めるとは、なんと謙虚な……しかし、ここまで体系だった知識が向こうの世界では共有されているんだな!? やはり、すごいところだ。日本という国は……次回の授業は現役の参謀たちにも聞かせなくてはいけないくらいのものになりそうだな!!」
そう言って、俺と教官はがっちりと握手をした。
その様子を見ながら、リーニャ大尉は頭を下げて震えていた。
やりすぎちまったかな?
※
その後、ずっとリーニャ大尉は調子が悪そうだった。顔面は蒼白だったし、小刻みに震えていた。
周囲からも心配されるくらいの落ち込みで、俺もなんだか罪悪感が出てきてしまう。
でも、戦争ならば彼女の指揮では国が破綻しかねない結果を生んだからな。それが分かっているからこそ、周囲も慰めることができない。
「それでは今日の講義は以上だ」
そして、波乱の初日が終わった。俺は用意された宿舎にもどり、クリスタ大尉とともに夕食を済ませて、部屋に戻った。
俺は、貴族士官と同じ扱いを受けているから個室らしい。それは嬉しいけど、ここまで好待遇を受けていいのだろうか。
とりあえず、王宮の図書館から借りてきた歴史書でも読むか。歴史書ならなんでも好きなのが俺の唯一のいいところだ。
ターニャの加護のおかげでこっちの言語は読めるようになっているし、完璧だな。
読書したらターニャと遊ぶかな? こっちで一番気楽に話せるのはやっぱりターニャだし……
そんなことを考えていると、ドアを叩く音がした。
あれ、この宿舎は貴族階級しかいないはずだから、ほとんど人がいないはず。誰だろう?
「どちらさまですか?」
「私です、リーニャです」
思いがけない声を聴いた。
「リーニャ大尉、ど、ど、どうしたのですか?」
やばい、やっぱりさっきやりすぎて復讐に来てしまったのか。変な汗がだらだらしてきた。
「開けてください。夜に女が男の部屋に入るのは失礼だとは承知していますが、あなたに大事な話があるんです。私の気持ちを伝えたいんです」