第249話 アルフレッドの罠
「アルフレッド将軍……少しずつ塹壕が陥落しています。決戦に出るべきではありませんか?」
「……無欲」
そうしたい気持ちを抑えながら、必死に我慢する。クニカズの手法を学んだ。ここは、まだ攻めてはいけない。あと少しで、すべてが成就する。
「ですが、クニカズ総監の負傷は、かなり重いと聞いています。このまま粘っても総監が復帰しなければ……」
「参謀長、たしかにクニカズの復帰は、この戦闘には間に合わないだろう」
「ならば……」
「だがな、航空魔導士隊は、クニカズだけではない。彼らは、クニカズによって鍛えられた者たちだ。私は彼らを信用している。彼らには特命を与えて動いてもらっているんだ。もう少しでその結論が出る」
「……そうなのですか!?」
「クニカズはすさまじい個の力を持っていた。だが、個人の限界もよく理解していた。自分が抜けただけで組織が崩壊するような事態だけは避けようとしていた。個々の力では、我々はクニカズには勝てない。だが、団結すればそうではない。クニカズを超える戦果だって必ず獲得できる」
「……」
「参謀長、もう終わりにしよう。クニカズ個人に国家の命運をかけることは……国家は我々一人一人が守らなくてはいけない。クニカズ不在の今、彼への恩をここで返さなくてはいけない。この陣地は死守だ。クニカズが育てた魔導士たちを信用しよう」
「わかりました」
すでに、砲弾はこちらの本陣に迫っている。だが、ここからは一歩も引くつもりはない。
※
そして、その時がやってきた。
「将軍、グレア帝国軍が陣地を放棄していきます。なぜだ、向こうの方が有利に戦況を進めていたはずなのに」
勝利の女神はこちらに微笑んだ。




