第247話 vs老兵
敵の攻撃がこちらの陣地を襲う。だが、クニカズが用意した塹壕に潜ることでほとんど被害は発生しない。敵の物資や体力をただ消耗させるだけだ。
「将軍、敵の攻撃が止みました」
「よし、反撃だ。撃ち方始めっ」
今度はこちらの反撃だ。敵はこちらと違い塹壕を用意できていない。圧倒的な火力が敵の前線を襲う。
「敵が後退していきます」
「やはり、指揮官はネールか。決断が恐ろしく早い」
下手な指揮官なら、前線を維持することに固執し、もっと被害がでるだろう。ネールは、最初の一斉砲撃が無意味だったことをすぐに理解し、一度作戦を練り直すつもりか。だが、こちらの塹壕は強固だ。有利はゆるがない。
「追撃はするな。なにかの罠かもしれない。もし敵が二手に分かれたら、こちらは前方の敵を食い破る。案ずるな。各個撃破できる」
もちろん、ネールならそんな愚策は取らないだろう。どうやって、こちらの強固な塹壕を破るつもりだろうか。力づくで無理やり突破でもしようものなら、幾重にも作られた塹壕の中から弓や魔力、砲弾の雨が降り甚大な被害が生まれる。
数をできる限り減らし、敵が消耗したら一気に塹壕から出て決着をつける。これがこちらの基本戦術だ。
※
「ネール将軍、敵にほとんど被害がありませんっ」
「うむ、こちらの予想以上に強固な防御陣地を敵が持っているようだな。塹壕戦術か。クニカズも恐ろしいが、アルフレッドもまた若き才能だ」
「いかがいたしますか」
「若き2人の天才に老兵が挑むか。神は、わしの人生の終わりに素晴らしい舞台を用意してくれたようだな。よろしい。一度、敵の射程外に後退する。敵は守備陣を維持するために追ってはこない。後退し戦線を立て直し、新しい戦術を試そうじゃないか」
「新戦術?」
「そう、浸透戦術だ!!」




