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第241話 コウハイ

 俺は覚悟を固めて後ろを振り返った。

 そこには、小柄な女が笑っていた。


 俺は彼女の顔を確認すると、また妖精の悲しい声が聞こえた。


生存(タナトス)領域、解放確認』


共感覚(シナスタジア)領域、接続確認』


 おそらく、ターニャがアカシックレコードに介入し何かしようとしているんだろう。おそらく、この動きはアカシックレコード本体の思惑を超える動きだろう。


 アカシックレコード本体の思惑通りなら、この状況ではなく別のタイミングで力を解放するはずだ。わざわざ、死にそうな状況を作る必要はない。リスクが高すぎる。


(かなで)、なのか?」


「はい」


 ブラック企業時代の後輩であり、俺が守ることができなかった女性。そして、社会人時代の恋人でもあった奏は笑って自分の部屋でくつろいでいた。


 お気に入りのクッションを抱きながら。


「そんなところで突っ立ってないで座ったらどうですか? これはセンパイの意識領域を極限化させるために妖精さんが見せている走馬灯なようなものですよ。私は私であって、私ではない。あなたの記憶から再構築された私です」


「すぐに会えなくなるのか?」


「そうですね。こんなに自由な会話ができるのは、たぶんこれが最後。あなたに伝えたかったんですよ。これはあなたの記憶から再構築された私の言葉……もしかしたら、オリジナルの気持ちとは別の言葉かもしれません。でもね、センパイ? これだけは……あなたに伝えたいという気持ちだけは、本物だから……」


 彼女は言葉を詰まらせながら続ける。


「私はもっとあなたに頼るべきだった。あなたはいつも私に手を差し伸べてくれていたのに。そして、最悪の選択をしてごめんなさい。自分勝手だった。いくらでもやりなおせた。あなたがいてくれたのに、信じることができなかった。自分勝手だけど、これだけはホントだよ。あなたのことが大好き。これまでも、これからも……もう少しだけ一緒にいたかったな」


 彼女は言い終わると、クッションを強く抱きしめる。人差し指同士を交差して。


「さぁ、そろそろ時間ですよ。短い時間だったけど、センパイと話せてよかった。次はもうないですよ? 気をつけてくださいね?」


 彼女は意を決して笑った。

 俺は、彼女を抱きしめる。


「センパイ?」


「もう、嘘はつかなくていい。ターニャ……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] あらゆる後輩がDさんのご馳走です。
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