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第230話 ポールの末路

―ポール視点―


 目が覚めた。どうやらここは陣を張っていた場所の近くにある森のようだ。敵の空襲から身を隠すために全軍で森の中に移動したのだろう。全体を把握した後、自分の体を確認する。全身に激痛と寒気が走る。刺されたわき腹が痛んだ。焼けつくように熱い。


「将軍、目が覚めましたか?」

 側近の参謀たちがこちらをのぞきこんでくる。


「ああ、全身が痛い。震えが止まらない。どうして、治療してくれないんだ……」


「それが……」

 本来なら治癒魔力を使える衛生兵がすぐに治療をしてくれるはずなのに、なぜか私は放置されている。


「衛生兵は、どうしたっ」


「全員、逃げました。あなたの治療を拒否して……」


「……そうか」


 当たり前と言えば当たり前だ。すでに私は反乱軍にでもされているだろう。すべての名誉を失い、英雄に嫉妬し陰謀を張り巡らせた哀れな男の末路。子を失い、こんな場所で不名誉な死を遂げる。名門の家を一代で潰した愚者。それが歴史家による自分への評価だろう。


「苦しい、寒い」

 誰にも悲しまれていない反逆者の死。衛生兵にすら治療を拒否された私と、誰もから信頼されているクニカズ。その対比が情けなさを自覚させてしまう。


「嫌だ、死にたくない。私は、軍のトップになるはずの男だったのに……」


 体から力が抜けていく。どうやら終わりの時が来たらしい。


「お前たち、私を殺したことにしてクニカズに降伏しろ。そうすれば、罪は軽くなる」

 なぜ、こんな言葉出たかわからなかった。


 部下たちは包帯で必死に止血しようとするが……


「無駄だ。これ以上の苦しみは不要だ。私は助からない」

 その自分の言葉に絶望を味わいながら意識は混濁していく。


「クニカズ、ラドクリフ、女王、宰相……英雄。あの演習がなければ、な」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分を客観視出来る力があれば、クニカズの元で働けたかもですけどね。 まぁ、ポールはどうでも良いので、あの女の末路こそ・・・
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