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第217話 衝撃

―グレア帝国宰相府―


「なるほど報告ありがとう」

 

「それだけですか……」


「いや、驚いているよ。陛下はショックで何もできなくなっているだろう。だからこそ、帝国ナンバー2の僕はしっかりしているように見せなくてはいけないんだ。これが人の上に立つ者の苦しみだね。悪いが対処策を考えたい。人払いを頼む」


「はっ」


 そして、僕はアリーナと二人だけになった。とりあえず、空になったグラスにウィスキーを注いだ。一口でストレートウィスキーを飲み干す。


「ずいぶん荒れているわね、宰相閣下?」


「荒れるなと言う方が無理があるだろう。わずか1日で帝国海軍の総戦力の40パーセントを喪失したわけだ。まさか、クニカズがこんな切り札を隠しているとは思わなかった」


「あなたがそこまで裏を突かれるとは? やっぱり、異世界から来た英雄は違うのね?」


「おそらく、対グレアのためにここまで隠していたんだろう。使おうと思えば、もっと早く使えたわけだ。だが、ギリギリまで存在を秘匿していた。あの魔導士たちの母艦も単なる巡洋艦だと見せかけていた。お前がスパイとして潜入してもわからなかったということは、担当者にすら秘匿されていたんだ。徹底的な情報管理。まさか、ここまで考えているとは……」


「ええ、そうね。おそらくこの運用方法を知っていたのは、女王とクニカズ、あとはアルフレッドくらいだったのでしょうね」


「だが、僕たちの有利性は変わらない。クニカズは北方管区の指揮権しかない。だから、今のうちに首都を攻略してしまえばいいのだ。首都には療養中の国家元首がいる。彼女を奪ってしまえばこちらのものだ。いくらクニカズでも指揮権がなければどうすることもできない」


「そうね」


「アリーナ、お前の部隊も前線に投入するぞ。妖精の加護を存分に活用してくれ」


「ベールを陥落させて一気に勝負を決めるつもり?」


「ああ、クニカズやアルフレッドではなくポールが指揮官のうちに、すべてを終わらせる。敵の首都であるベールに対して総攻撃を仕掛ける」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂にアリーナの後悔と苦渋と絶望に塗れた晩年が始まるのですね。
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