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第211話 エース

 俺が基地の外に出るとすでに攻撃が始まっていた。地上攻撃用の魔導士を円の中心において、それを護衛するスタイルか。敵は最も基本的な陣形だが効果があるものを使っている。


「クニカズ中将。お下がりください。敵は腕章持ちが3人います。いくら精鋭無比のあなたの部隊でも分が悪すぎます」


 部下の一人が慌てて止めに来た。

 腕章持ち。グレア帝国航空魔導士隊には、敵兵を5人撃ち落とすとエースに任命されて腕章をつけることが許されるらしい。だから、歴戦の勇者であり敵のエースのことを腕章持ちと呼んでいるのだ。


「安心しろ。将軍は、下手な腕章持ちじゃねぇよ。トップエースだ」

 辛苦を共にしている昔からの部下が笑っていた。すでにみんな準備万端らしいな。


「お前たちは、一番前の魔導士隊を頼む」


「クニカズ閣下は?」


「わかっているだろう? 俺は後ろの2つだよ」


 俺はそう言うと瞬時に空を駆けた。部下たちが続く。

 部下たちに先頭の部隊を任せて、まだ攻撃の余力がある中央の敵軍を狙う。


 中央の敵の数は約12。全員撃ち落とす。


 魔力を込めてダンボールを先鋭化させて敵に突撃させる。誘導兵器と化したそれが、敵軍を正確にとらえて次々に命中していく。


「なっ!?」

 中央のリーダーらしき魔導士は俺の姿を見て一瞬驚いたがすぐに墜落した。魔道具を狙って攻撃しているので、直撃したら終わりだ。


『まさか、クニカズ司令官自ら出てくるとはな』

 俺の攻撃を唯一逃れて敵のエースらしき男が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。だが、遅い。すでにかなりの魔力を使っているので誘導はできないようだ。それなら簡単にかわすことができる。


『ちぃ』


 敵は焦る。だが、こいつにかまっている必要は特にない。俺の目的は地上攻撃を防ぐことだ。


 後方の部隊にも同様の攻撃をおこなった。正確無比な誘導攻撃が同じように敵の後続を撃破する。


『まさか、数十秒で20人以上がやられたのかっ!! 第4・第5攻撃隊は引き返せ。地上攻撃中心の編成の後ろじゃ簡単にやられるぞ。こっちの機動力が高い対空魔導士が相手にならねぇんだ』


 敵のエースがそう叫んだ。魔道具を使って後続の部隊に連絡を取ったのだろう。よい判断だ。


『敵の正体は、やはりクニカズだ。1対1では勝ち目がない。複数で行くぞ』


 そう言うと生き残っていた3人の敵エースが俺を取り囲むように動き始める。

 どうやら、ザルツ領で見かけたあいつはいないようだ。アリーナも。ならやってやるぜ。


 俺は敵に向かって突進した。


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