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第206話 北方軍

―北方管区司令官室―


 俺は基地に到着すると、引継ぎを終えて、すぐに幹部を集めた。だが、軍団幹部は俺が見知った顔ばかりだったわけだが。


軍団長:クニカズ中将

副軍団長:クリスタ少将

参謀長:リーニャ少将


「まさか、みんな北方管区に左遷されるとはね」

 クリスタは苦笑いしながら気持ちを代弁してくれる。


「私たちはクニカズ・マフィアだから仕方がないわ。かなり警戒されているのよ。それよりも、アリーナの件は、私が気づけなかったことに責任があるわ。本当に申し訳……」


「いや、リーニャが謝ることではないよ。それなら直接止めることができなかった俺にも責任がある」


「クニカズ……」


 実際、本人には聞いたわけではないが、アリーナの裏切りを知ったリーニャは、その場で泣き崩れるほどの動揺をしたらしい。


 彼女にすべての責任を取らせるのは酷である。


「だが、クニカズ。この北方管区では俺たちの動きは制限されるぞ。ここはほとんど予備の戦力のようなものだ。お前の影響が強いと考えられて転属となった軍第1遠征旅団が配下にいるのが唯一の救いで、あとはお前たちが秘密裏に整備している艦隊くらいだろう?」


「ああ、戦力は正直に言うと心もとない」


「だから、聞かせてくれよ。この後、どういう流れになると思っているんだ?」


 クリスタは俺にそう迫る。


「おそらく、ポール率いるヴォルフスブルク政府は、旧ザルツの締め付けを強化するだろう。そこにグレア帝国が介入し、全面戦争になると思う」


「「全面戦争っ!!」」


「ああ、残念ながらな……」


「だが、こちらの方が航空技術に有利なところがあるんだろう? どうして、そんな無謀なことを」


「おそらく、向こうは航空技術を隠しているんだと思う。実際、俺もテロリストたちを潰す時に向こうのエースと戦ったが、かなり強かった」


 ヴォルフスブルクの航空技術の優勢は、妖精の加護によるところが大きい。アリーナは自分も妖精の加護を受けていると言っていたことを踏まえれば、向こうにも同等の戦力があると分析した方が安全だ。


 さらに、テロ事件で混乱が続く状況が最大のチャンスである。あの宰相なら間違いなくここを狙って動き始めるはずだ。戦争が近いはずなのに、何もできないことがもどかしすぎる。


 そして、それを解決する唯一の選択肢が自分の手元に残っていることもわかってはいた。

 数が少ないとはいえ、軍事力は保有しているのだ。


 クーデターによるポール排除。その誘惑に俺は誘われていた。

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