第204話 爆発
「お前、なにをした!!」
俺は激高しながら、アリーナに迫る。だが、彼女は機敏な動きでそれをいなしていく。やはり、こいつにも妖精の加護があるのかっ!
「くだらないことを言わないでよ。世界最強の魔導士様? わかりやすいでしょ。演説会場での騒乱があったら、女王陛下はどうやって会場から避難するか? そこに罠を仕掛けておけば、彼女の暗殺はたやすい」
暗殺。だが、魔道具であんなに大きな爆発を起こすことは難しいはず。俺と戦ってなおかつ魔力攻撃まで司っているのか!?
俺のダンボールと同じように
「やっぱり、怒ってる。いいわ、あなたが絶望に染まる顔が最高よ」
アリーナは、5本のナイフを取り出した。それらを空中に浮遊させる。俺がダンボールを自在に使うように、彼女はナイフを自在に動かしている。
「あなたは、私と同じ絶望の匂いがする。一度すべてを失った人間だけが持つ、特有の絶望の香りが。じゃあね、私は逃げるわ」
俺が5本のナイフに苦戦していると、彼女はふわりと空中に浮いた。
「ああ、俺はすべてを失った。だが、お前ほど落ちぶれているわけじゃない」
「はぁ!?」
「俺は、すべてを失っても、お前みたいに人間に絶望したわけじゃない。信じてくれていた仲間たちを裏切るようなことは絶対にしない。俺は、お前を大事な友人だと思っていたんだぞ?」
「そう……ありがとう。でもね、最初に私たちを裏切ったのは、あなたが信じているこの国なのよ?」
絶望的なほど冷たい声を残して、彼女はどこかに消えていく。
俺は追跡しようとしたが、ナイフの攻撃に阻まれて断念せざるを得なくなった。
「くそっ!!」
自由に動くナイフをすべて破壊し、俺はすぐに爆発があった場所に急行する。
そこはパニックになっていった。
俺は必死にウイリーとアルフレッドを探した。
「クニカズ将軍、どうしてここに!?」
見知っていたアルフレッドの副官だった。
「女王陛下とアルフレッド次官は無事か?」
「はい、現在治療を受けております」
「そこに案内してくれ」
※
俺は、すぐに二人が運び込まれた建物に案内された。
治療室にはアルフレッドが座って治療を受けている。体の至る所から血が出ており、かなりの重傷だとわかった。
「クニカズ、来てくれたのか?」
「アルフレッド、無事か!?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「ウイリーは? 女王陛下はどうなった? 軍務大臣は?」
「俺よりもケガが深い。意識がないが、なんとか無事だ。だが……」
アルフレッドは口を紡ぐ。
その様子を見て、ライツ軍務大臣が亡くなったことを察した。




