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第189話 鎮圧

 俺はあえて、枝を踏んで物音を立てた。

 見張りの2人組がその音に気付いて、こちらに近づいてきた。俺は少しでも敵の目を欺こうと、フードを被って顔がよく見えないようにしている。さらに、日が沈んだ状態ならよほど近くにいかなければ、顔なんて見えるわけがない。


「おい、誰だ。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ?」

 剣を手に持ちながら、ひとりの男がこちらに向かってくる。もう一人は念のため倉庫の入口で待っているようだ。


 二人同時に無力化する必要があるな。


「すいません。道に迷ってしまって……申し訳ないんですが、道を教えてくださいませんか?」

 俺は顔がよく見えないのは利用して偽装する。ほんの少しだけ見張りの気持ちが緩んだのがわかる。チャンスだ。


 高速魔力が入口前の男を襲う。まさか、自分が先に攻撃されるとは思っていなかった男は何もできずに攻撃をくらい崩れ落ちた。


「おい、お前何をした!!」

 近づいてきた男が慌てて、俺を取り押さえようと向かってきたが同じように攻撃して叩き伏せた。

 最初に中に知らせないように離れた敵を狙った。ピンポイント攻撃で無力化して、近づいてきた男は一撃で倒せば、騒がれるリスクが下がる。


「はぁはぁ、お前はいったい……」


「悪いな、道に迷ったのは嘘だ。これでも関係者でな」

 俺はフードを取ると、相手は絶句する。


「おまえは、クニカズ将軍……ヴォルフスブルクの悪魔、か」


「おいおい、悪魔とはひどいな。でも、関係者なら立ち入りを許してくれるんだろう? ありがたく突入させてもらうよ」


 なんとか立ち上がって大声を出そうとしている男に、俺は追い打ちをかけて攻撃する。腹に直撃した俺の攻撃は、短い悲鳴と共に男を無力化した。


「しかし、一撃で倒すつもりだったのに、耐えるとはな」

 やはり、こちらが戦闘要員だったんだろう。入口付近の男は一撃で倒れて意識を失っている。ちなみに、ふたりともまだ知らない情報を持っている可能性がある有力な容疑者だ。だから、殺さないように手加減している。


 倉庫の中に魔力を流し込んで、中にいる敵の数を確認した。5人か。思った以上に少ないが、どんな手練れがいるかわからないからな。


 昔、ドキュメンタリー映画で見た特殊部隊のように、俺は感覚を研ぎ澄ませた。いくつか用意した魔道具で使えそうなものを袋から取り出して手に持った。


 まずは、犯人の視界を妨害するのが突入時のお約束だ。そして、できる限り速やかに無力化する。


 俺は倉庫のドアの前に座り、気を落ち着かせるために一息ついた。


「突入だ」

明日は更新お休みです。

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