第188話 突入
俺はそのまま、情報局でも有数の魔力の使い手を連れてザルツ公国の旧・首都に向かった。
そちらの郊外にある倉庫に、武装蜂起用の武器や物資が隠されていることはすでにつかんでいる。さらに、テロ組織の幹部たちが定期的に倉庫に集まって密談していることも報告されている。
俺は部下たち用に、前線部隊の時に作ったコネを使って空中浮遊ができるようになる魔道具を確保している。
これで高速で移動が可能だ。敵は今日、強襲されるとは思っていないはず。武装蜂起のための物資をすべて失えば、敵の戦略に大きなダメージを与えることができる。
倉庫には局員ひとりだけが監視をしているだけだ。
俺たちは倉庫が近づいたら高度を下げて、森に紛れ込む。これで敵に気づかれていないだろう。
「局長、なぜここに!?」
まさか、俺が来るとは思っていなかった部下は、合流ポイントにやってきた俺に驚いた。
「最前線で戦いたい派でね。状況は?」
「旧・ザルツ公国第一師団長をはじめとする過激派が集結しています。倉庫の前には、数人の衛兵がいます」
彼は、非常に目がいい上に索敵魔力に才能があった。今回の監視役に最適だ。
「ありがとう。なら、都合がいいな。みんなは、俺が敵を全員確保できなかった場合は援護してくれ」
「しかし、ひとりで敵の衛兵をどうやって対処するんですか?」
「大丈夫だ、向こうでは蛇と呼ばれていたほどの男だぞ、俺は?」
もちろん、ゲーム世界の話だが……
ステルスミッションゲームとかFPSとかも好きだったんだよな。下手だけどさ。それに蛇とダンボールは相性抜群と相場が決まっているからな。
「(センパイ、微妙にかっこ悪いです)」
妖精はそうささやいた。
「(いいんだよ。何も知らない部下が喜べばさ)」
『やっぱり、局長は向こうでは最強の諜報員だったのかもな』
『ああ、あまり過去を語りたがらないところもミステリアスでかっこいいぜ』
なんか少しだけ罪悪感を押し付けられてしまうが、夢を見せることは大事だよな。
とはいっても、ここでテロリストを確保できるかどうかは今後の状況に関わる。
俺は無慈悲に魔力を解き放った。




