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第173話 ホームレス、本音を語る

「何を言っているんですか!? あなたは、間違いなく歴史に残る最高の名将ですよ。下手な慰めはいりません。そんなことをされても、逆に悲しくなるだけです。私は同情が欲しいんのでありません。勘違いしないでください!?」


 ムーナ大佐は、俺の態度に逆上しつつあった。


「違うんだ。俺はキミが思っているほど、できた人物じゃない」


「下手な同情は、余計に傷つくだけです。あなたほど、万能な人はいない!!」


 やはり、誤解は解けないようだ。ならば、俺は誠実に彼女に真実の自分をさらけ出すことにした。


「俺の実績は、別の世界で培った知識があるだけだ。その世界では、俺の知識は少し勉強すればすぐに身に着けるくらいのものだ。それを有効的に活用しているに過ぎないんだよ。だから、ゼロから築き上げたキミのキャリアの方がすごい。それは俺が保証する。だから、これ以上自分の価値を過小評価しないでくれ!!」


「えっ?」


 ムーナは顔を真っ赤にする。どうやら、負のスパイラルは抜け出せたようだ。


「俺は、別の世界では何もできなかったんだ。守ってあげたかった女の子すら守ることができないほど、情けなくてさ。結局、彼女は守ることができなかった。そして、現実を捨てたんだ。現実に絶望して、逃げて、知識の世界に逃げだした。だから、自分をこれ以上(おとし)めないでくれ。キミはずっと頑張って来たんじゃないか。俺よりも強くて、ずっとこのつらい現実の世界で生きてきた。今回の失敗だって、ただ経験値が不足していただけだ。その経験を補えれば、ムーナ大佐はもっと成長できる。俺なんかよりもずっとすごい人間になれる。だから、前を向いてくれ」


 思わず出てしまった本音に、彼女は動揺していた。


「局長?」


「悪い。少し感情的になってしまった。でも、どことなくムーナ大佐は、昔守ってあげたかった後輩に似ているんだ。キミは、とても頑張り屋でだからこそ、ここまで来たんだ。皆、キミの頑張りを知っている。だから、一度の失敗でそんなに落ち込まないで欲しい」


「えっ? えっ??」


 彼女はいつもの凛とした表情からは考えられないほど、動揺していた。


「キミは、この新しくできた情報局に必要不可欠な存在だ。俺は、すぐに前線に復帰するだろう。その後任にはキミしかいない。だから、今回の些細な失敗なんて気にしないで、今後の成功につなげて欲しい!!」


「わかりました。わかりましたから、落ち着いてください、局長っ!! ちょっと、恥ずかしすぎます!!」


 食堂の皆は俺たちに注目していた。大佐は、顔を真っ赤に染めていた。


「えっ!?」


 思わず感情的になってしまい、周りを見失っていたことに気づく。軍務省職員たちは、好奇の目線でこちらを見つめていた。


 これはやばい!?


 ※


「なぁ、クニカズ将軍、完全にムーナ大佐を口説いていたよな」


「ああ」


「あんなに情熱的なのに、違うなんてありえないよな……」

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