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第169話 ホームレス、情報を審査する

 情報局は成立して、俺たちは忙しく仕事を始めた。


 両国に駐在武官として赴任した部下たちの情報を分析するのが俺たちの仕事だ。ただし、俺の局長としての仕事は1年くらいで終わりになる予定だ。


 ウイリーからは「情報局を軌道にのせたら、あなたには前線部隊に戻ってもらわないといけません」と言われている。要は、1年で部下を鍛えて後任になれるまで育てろよということらしい。正直に言えば、リーニャ以外はこういうデスクワークが得意な人間を知らない。


 だから、部下の情報課長や分析課長のどちらかに彼女を就けたかったが……

 軍務省作戦局作戦課長の要職にいる彼女を異動させるのは叶わなかった。


 席次の問題もある。


 クリスタはどちらかと言えば数学的な後方支援が得意なので、情報局の文系的な情報解釈には向かない。


 ということで、同期のメンバーたちの助けを借りられなかった。


 だから、アルフレッドに頼み込んで優秀な軍政官僚を派遣してもらった。


 情報課長には、ムーナ=グレーズという女性軍人に頼んだ。士官学校を3番目の成績で卒業したエリートだ。30代中盤ながら大佐に昇進している。


 もうひとつの分析課長にはカレル大佐という男が就任した。士官学校の成績はそこまで良くなく、軍事大学に進学しなかったことで昇進は遅れているそうだ。ただし、前線や軍の中央からは外れた出世ルートをたどり、外国勤務が長かったため語学が堪能になったそうだ。


 ムーナ大佐がイケイケのエリートならば、カレル大佐は苦労人のプロフェッショナルで温厚な人物。対極な人物を送ってもらった。これも俺の狙いだ。情報を分析する場合は、いろんな意見があった方がいいから。


 カレル大佐は俺を良く補佐してくれる。年下の俺の部下になるのは心情的に穏やかではないだろうに、そんなことは微塵も感じさせずに丁寧に接してくれる。


 逆に、ムーナ大佐はこちらをライバル視している様子が見て取れる。優秀でトップエリートだからかな?


 まあ、そこらへんは少しずつ解決していこうと思っていたが……


 すぐにその時はやってきた。


「局長、マッシリア王国からの定時連絡で興味深い内容の報告が……」

 カレル分析課長は俺にメモを渡す。そこには、「マッシリア王国軍が、海軍力の増強の意思を示した」と書いてあった。


「なるほど」


「もしかしたら、戦争準備の一貫かもしれませんが?」


 確かに興味深い内容だ。


「いい機会だ。課員を集めて、皆で情報を分析しよう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ライバル心を持つ事は悪い事ではない。 ただし・・・
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