第166話 ホームレスの現状分析
2週間の外遊が終わり、俺は女王陛下に状況を説明した。軍縮の件も含めてだ。
「以上が、私が考えるグレア帝国の内情です。向こうはこちらを分断させようとしてくるでしょう。ただでさえ、統一から間もない我が国ですから。付け入るスキがあると考えているのです」
「では、クニカズ? あなたはどうすればいいと考えますか?」
「グレアはすでに諜報部門において、こちらよりも一歩進んでいます。向こうは正面からの衝突は、航空技術の差によって避けたいはずです。ですから、戦わずにこちらを分断させて弱体化させようとしてきます」
「そうね。私でもそうするわ」
「よって、こちらの弱点である諜報部門の強化は急務です。失礼ながら、ヴォルフスブルク王国の宰相も敵国に通じていた実情がありますからね。すでに、国内はスパイ天国になっている可能性が高いと思います。造船場という軍事機密の塊に敵国がアクセスできたことでも、わかりますからね」
俺の提案に女王陛下を含む軍首脳部は頷いた。
「では、軍務省に情報局を創設します。もちろん、初代の局長は、クニカズ。あなたです」
「謹んで拝命致します」
これでこちらも本格的な諜報機関を持つことができた。
スパイ機関のトップになるのは緊張するな。
自分で言ったことだし、こうなるのも仕方ない。
「では、あなたの部下ですが……なにか、希望はありますか?」
「そうですね。グレア語が堪能な人が欲しいです。あと、マッシリア語も……あと、駐在武官経験者も……」
駐在武官とは、外国の大使館に派遣される軍人のことだ。外交と国防は切り離せない関係であり、外交の専門家が軍の専門家ではないので助言役として派遣される。もちろん、それは表向きで、裏では相手国の情報を集めなくてはいけないのだが……
もちろん、向こうで仕事をするので、語学に堪能な軍人が多い。彼らは勉強熱心なので、部下になれば非常に頼もしいだろう。
早期に情報機関を整備して、他国の介入を防がないといけない。2国間の冷戦期における諜報機関の重要性は、やはり米ソが証明している。両超大国は、CIA・KGBといった最強のスパイ組織を動かして、周辺諸国への介入をおこなった。もちろん、それを妨害したこともだ。
ここから先は水面下の戦いも重要になる。




