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第158話 ダンスパーティー

 夜はグレア料理のフルコースを食べながら歓談タイムだ。豪華なコース料理を異世界で食べることになるとはな……


「やはり、美食の国の料理はおいしいですね、クニカズ将軍?」

 今回は俺の随員として、アリーナ中佐が来ている。本来はクリスタにお願いしたかったが、彼は別件の計画作りで忙しそうだから外れた。リーニャは家柄もあって、警戒されやすい。そういうことで、同期のアリーナに役が回ってきた。


 彼女も貴族階級出身だからマナーにも詳しく俺の目付け役にもなるらしい。まあ、俺は一般常識に疎いから助かるんだけどさ。


「それにしても、ずいぶんと警戒されている。どこに行くにしても、誰かしらの監視役がついてくるし」


「仕方ありませんよ。みんな、クニカズに注目しているんですよ。世界最強の魔導士。航空魔導士の先駆者。戦略の寿命を数百年縮めた男。グレアの軍人はあなたをそう呼んでいるみたいですよ」


「過大な評価だ」


 そう言って、俺はワインをあおった。


「クニカズ将軍でいらっしゃいますか?」

 席を離れて自由に会話を楽しむ時間になった。俺はそう呼び留められて後ろを見る。


 穏やかな顔をした白髪の老人が笑っていた。大柄な偉丈夫で、軍服がよく似合う好々爺。

 これはずいぶんと大物が出てきた。


 グレア帝国陸軍大臣であり、ニコライ・ローザンブルクや宰相とも戦えるほどの名将が笑って待っていった。


「ネール陸軍大臣閣下でいらっしゃいますね? グレア帝国最高の名将にお会いできるとは光栄です」


「何をおっしゃる。当代最高の名将に、名前を憶えてもらっているだけで、こちらも光栄だ。わしなどは、過去の遺物じゃよ。未来ある若者と話ができるだけで幸せだな」


 事実上のグレア帝国軍の最高幹部がまさか直接仕掛けてくるとは……

 こう牙を失っているように見えるが、ゲームでも5本の指に入る名将だ。


「航空魔導士と騎兵を使った機動戦。神出鬼没の航空魔導士を使い敵軍の情報や指揮系統、補給の結節点を中心に狙い、無力化する。先日のザルツ公国騒乱の際に見せたキミの作戦は見事だった。まさに、革命的な戦略だ」


 俺の作戦は完全に分析されていた。


「ありがとうございます」

 肝を冷やすような気分だが、それを必死に隠す。この人はヒントを与えただけで数百年後の知識を簡単に体系化してしまうのか。本当の意味で頭の出来が違うんだろう。


「そして、これは私なりの対策なんじゃが……場所を変えて話そう。聞いてくれるかね?」

 老紳士はぎろりと俺を見つめて笑った。

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