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第152話 ホームレス長距離精密射撃を行う

『センパイ、この位置なら狙えそうですよ』

 妖精は、俺をそう誘導する。


 ここは機動部隊の後方にある丘のような低い山だ。俺が率いる航空魔導士はここに集結させた。

 すでに、ラガ大佐から救援要請がだされているがあそこまで乱戦になってしまえば、味方を攻撃してしまう危険性もあるので、うまく手が出せない。


 だからこそ、この山に隠れて機会を狙っていた。


 ラガ大佐は、敵将との一騎打ちをおこない始めた。さすがは、大佐だ。あのグレア帝国の猛将を相手にしても一歩も引かない。だが、やはりパワーの面で押され始めている。


 ここは援護したいが、精密な魔力攻撃でなければならない。


 この地点から戦場までは約2キロほどだ。妖精の加護による視力強化で、なんとか状況を確認できている。


「よし、やるか」


 今回の攻撃は、光魔力を使う。強烈な光の束を弾丸に見立てて、敵を精密射撃で狙撃する。


『私が魔力アシストします。センパイは当てることだけを考えてください』

 

 敵の指揮官を潰せば、敵は浮足だって戦線を放棄しやすい。あとは、そこをこちらの航空魔導士が攻撃していけばいい。


 俺と妖精は協力して、強力な魔方陣を生み出した。


『なんだよ、准将のあの魔方陣。どんだけ複雑なんだ』

『当たり前だろ。ここからあの粒みたいな標的を狙うんだ。普通ならできるわけがねえよ』

『ここからなら普通は大砲を使うしかないから』


 まだ、ダメだ。タイミングを誤れば、大佐まで巻き込んでしまう。彼女は優秀な地上部隊の指揮官だ。ここで失うわけには、いかない。


 すべての条件が整った瞬間。ラガ大佐が、姿勢を崩して倒れ込んだ瞬間を狙う。


 次の瞬間、俺の攻撃は将軍の肩を撃ち抜いた。


―――――

(作者解説)


・狙撃について

ちなみに、現実世界のスナイパーによる最長狙撃距離は、2017年にカナダの特殊部隊員が達成した3540メートル。光学機器が発展している現代においても実戦において1200メートルを超える距離の狙撃に成功した例は数が少ない。3540メートルの距離は、銃を撃ってから目標まで10秒程度かかる距離であり、風・地球の自転・数学や物理学的な計算が必要。


・大砲

16世紀の大砲としては、カルバリン砲やカノン砲、フランキ砲が有名。

日本で初めて使われたのは大友宗麟のフランキ砲で城塞の防御などに活用された。

カルバリン砲は、イギリスがスペインの無敵艦隊を打ち破ったアルマダ海戦で活用されたとされており、強力なカノン砲を使っていた無敵艦隊に対して、威力は抑えめだが射程に優るカルバリン砲を主に用いたイギリスの勝利の一因になった。

カルバリン砲は徳川家康も採用し、14キロの砲弾を6キロ以上飛ばしたとされる。

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