第150話 猛将vs猛将
「グレア帝国義勇軍に向けて、攻撃を集中!! ここを潰せば私たちの勝ちよ」
だが、グレア帝国の精強な騎兵隊は、対魔道アーマーに守れていて、ザルツ公国の部隊とは違って魔導士の攻撃をものともしなかった。
魔道アーマーは、かなり高額な装備で大国でも一部の部隊にしか配備されていない。すべての兵士にこれを提供した場合は、間違いなく財政が傾く。その貴重な装備を義勇軍に回したということは、グレア帝国側が、クニカズ准将を相当警戒していることの裏返しだ。
魔力攻撃が効かないのであれば、白兵戦しかない。魔導士を失えば、この先の個々の防衛ができなくなる。彼らを死守し、前線部隊が敵をせん滅するまでこちらを持ちこたえれば勝ちだ。クニカズ准将率いる航空魔導士隊主力が帰ってくれば、いくらグレア帝国の猛将でも勝ち目はない。
「騎兵隊は前に。私に続きなさい。魔導士隊を死守する」
川を渡り切った敵兵の襲うように騎兵隊が前進する。
敵兵と味方が入り乱れる白兵戦が始まった。
こちらの部隊も元々は、近衛騎士団出身者で固められている。精鋭部隊だ。良い勝負はできる。さらに、敵兵は足元が不安定で疲労や精神的なプレッシャーもある。
白兵戦になればこちらが有利。ひとりのイレギュラーをのぞいて……
「邪魔だ。この程度の力で、俺を止められると思うなよ!!」
ビルト将軍に向かう兵士たち3人が安々とねじ伏せられてしまった。さすはグレア帝国の猛将だ。一兵卒から実力だけで駆け上がったたたき上げの猛将。評判通りの強さだった。
「あの将軍は、私に任せなさい。他の者たちは、敵の騎兵の足止めを」
「大佐!!」
「大丈夫です。あの男を止められるのは、私しかいないわ」
そう言って将軍の前に馬を進める。
「ほう、その旗印。聞いたことがあるぞ。ヴォルフスブルクの近衛騎士団副団長様か。言っておくがここは戦場だ。女騎士とはいっても手加減などしないが、覚悟はよいか」
「剣の道に生きると決めた以上は、甘えは捨てています。ビルト将軍、一騎打ちを申し込ませていただきます。ご覚悟を」
「言ってくれる。気に入ったぞ小娘。名を聞こう」
「ヴォルフスブルク帝国第一遠征旅団副長ラガ大佐よ」
「楽しませてくれよ、ラガ大佐」
将軍は、長剣を抜く。巨大な剣を軽々と扱う歴戦の猛者は、じりじりと距離を詰めていく。お互いに愛馬に合図をして開戦のタイミングを待っていた。
「来ないのならこちらかいくぞ!!」
先に仕掛けたのは将軍だった。




