第15話 ホームレス、妖精と対談する
「あっ、このパイ美味しい! やっぱり、王宮料理ってすごいな~」
ダンボールの妖精は機嫌を取り戻していた。よかった。
「ごちそうさまでした~」
結局、美味しそうに食べるターニャを見ているのが楽しくて食べ終わるまで見てしまっていた。
「それでさ、ターニャ。聞きたいことがたくさんあるんだけど……」
「ええ、パイに免じて3つまでなら聞いていいですよ」
「じゃあ、どうして俺を選んだんだ?」
「あ~ひとめぼれですよ」
「嘘!?」
「冗談です。先輩は魔力特性が高そうだったから、私に気づけたんですよ。たまにいるんですよね。日本とか魔力が必要のない世界なのに、そっちに才能が特化した天才がね。科学世界では絶対に使わないはずなのに、少し加護を与えてあげれば怪物に生まれ変わっちゃう人」
「それが俺なのか……そもそもさ、ターニャ……お前みたいな妖精がどうして日本にいたんだよ?」
「ああ、やっぱり気になっちゃいますよね。ダンボールってどうやって作られるか知っていますか?」
質問を質問で返された。
「え~っと、たしかリサイクルだよな。ダンボールの原材料は、ほとんどリサイクルされたダンボールって聞いたことがある」
「正解! そうなんですよ、私ってある意味、先輩以上に転生していると考えてもらっていいんですよ。そして、何度も何度も転生を繰り返せば繰り返すほど、人間の執念や気持ちが私たちに集中する。魂っていろいろと伝わるものなんですよ。哲学には《魂の不死》っていう考え方があるじゃないですか。そして、私はその魂の集合体。何度も転生したことによって、私は多くの人間の魂をもらったんです」
「なるほどな」
正直、難しいからわかったようなわからないような感じだ。でも、不思議と説得力があった。それなら仕方がないみたいな……
「でもさ、現実世界で生まれたダンボールの妖精が、どうして俺をゲーム世界に飛ばせたんだよ? おかしいじゃないか」
「あ~それ聞いちゃいますかぁ。まあたしかにそうですよね。普通に考えたらおかしい。でもね、センパイ、世界ってひとつだけじゃないんですよ。いくつもの並行世界が存在している。一部の小説家やシナリオライター、ゲームクリエイターの人って意識的にその並行世界を覗き見ることができるんですよ。高度に成長した妄想の力は、世界の壁すら超えてしまうんです。そして、マジックオブアイアン5はそのクリエイターによって、異世界の情報を読み取って作られたゲームなんです。だからここは、ゲーム世界であって、遊びじゃない」