第149話 崩壊に向かうザルツ公国
―ヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団機動部隊―
「ラガ大佐、ザルツ公国守備隊の一部が見えました」
私は地上部隊の指揮を准将から委任されている。すでに、クニカズ准将のシナリオ通りに事が進んでいた。
「では、航空魔導士隊へ救援を要請してください。それまでは、私たちだけで持ちこたえますよ」
目の前の川を有効活用して、私たちは防御に特化する。騎兵隊の最大の利点はその進軍スピードの速さだ。そして、逆に装備が軽装になりやすい弱点がある。
「魔導士隊、攻撃開始!」
クニカズ准将は航空魔導士ばかり注目されがちだが、それとは別に魔導士騎兵隊という革命も起こしている。魔導士を騎兵化することで、本来の騎兵以上に強力な飛び道具を確保できる。
魔導士隊の火力を使えば、騎兵が苦手としていた拠点の防衛が楽になる。
その意見を聞いた瞬間、私は世界が反転したかのように驚いた。
騎兵隊の常識が、クニカズ准将によって簡単に塗り替わった瞬間だった。
川を渡っている敵兵は、強力な魔力攻撃によって吹き飛ばされていく。足元が不安定な川では、強力な攻撃を避けることすらかなわない。
これなら数に劣る機動部隊でも守備隊を足止め可能だ。その間に前線に展開している南方方面軍が徐々に前進して、敵軍は圧殺される。
「大佐! 大変です。グレア帝国義勇軍がこちらに突っ込んできます!! 指揮官は、猛将ビルトです」
ついに来たか。この作戦で最も恐れなくてはいけない相手だ。クニカズ准将もこの部隊に常に注意を払えと言っていった。人材の宝庫であるグレア帝国の中でトップクラスの猛将の一人がこちらに向かってくる。戦局は最終盤に突入した。
ここをしのげば、勝てる。
―――――
(登場人物紹介)
ビルト中将(グレア帝国:ザルツ公国への義勇軍司令)
知略:64
戦闘:84
魔力:39
政治:31
スキル:猛将・疾風
グレア帝国義勇軍を率いる将軍。
人材の宝庫であるグレア帝国でも、特に戦闘向きな猛将で、率いる軍の速度を上げる疾風というスキルを持つ。特に騎兵を率いることに長けており、彼が率いる騎兵隊の進軍スピードは彼の戦闘力もあって、屈指。
ただし、猪武者になりやすく、適当に使っているとすぐに前線で孤立してやられてしまいがち。
他国では軍事面でエース級の能力値だが、人材の宝庫であるグレアにおいてはそこそこ使える猛将の位置にいる。
彼が中将でとどまっていることは、すなわち、グレア帝国の大将級以上がどれほどチート能力値を誇るかわかりやすい。




