第147話 ホームレス、速攻する
「素晴らしい戦果だな、クニカズ准将!!」
俺がヴォルフスブルク軍南方方面軍司令部に戻ると、グリツァー少将が出迎えてくれた。
「ありがとうございます、少将」
「アルフレッド中将から連絡があった。クニカズ准将の策を採用して、主力部隊が壊滅したザルツ公国に侵攻するようにとな。下手に時間をかければ、グレア帝国などの介入を招く可能性がある。時は金なりだそうだ」
そうか、アルフレッドが承認してくれたか。すでに、訓練は終えている。南方方面軍はザルツ公国撃破のために、常日頃から訓練を積んできた。
だからこそ、この戦略も採用可能だ。
「少将。作戦計画を具申します。この作戦はそうですね。"電撃戦"と呼称します」
俺は地図を開く。クリスタに目配せをした。補給経路の確保を進めるようにアイコンタクトを送る。彼は頷いて、事務作業に入った。
「少将。制空権はこちらの手の中にあります。まずは、敵の通信網や指揮系統を叩きます。これは私の部隊の半数で行います」
「なるほど。さきほどの攻撃をより広範囲におこなうのだな」
「はい。ですが、敵はすでに主力を失っております。こちらの優先目標の防衛は不可能に近いでしょう。航空攻撃で敵の指揮系統を奪ったら、第一旅団の機動部隊が先攻してなだれこみます」
「機動部隊?」
「はい。騎兵と航空魔導士です。騎兵の航空支援を魔導士が行い、騎兵隊はこの場所を目的地として前進します。後方から南方方面軍の部隊が追いかけてください」
「すさまじい一点突破だな。だが、先行し過ぎた機動部隊が孤立する危険性はないのかね」
「その対策として、こちらが敵の指揮系統を奪っております。機動力を生かすことができれば、敵の最後の戦力である守備兵力もせん滅可能です。機動部隊には必要以上の前進は戒めております」
「なるほど。機動部隊が敵の後方を脅かせば、守備兵は動揺し完全に崩壊する」
「そして、この地点の川と山岳を利用すれば、少数の機動部隊でも撤退してくる守備兵の足止めは可能です」
クニカズの構想を聞くと少将は驚きつつも納得した。
「機動部隊の最初の目的地をここに設定したのは、敵を包囲殲滅しやすい場所だからか」
「はい。敵の主力部隊と最後の残存戦力である守備隊を失えば、ザルツ公国を守る戦力はなくなる。勝利は確定します」
「だが、あまりに早い機動部隊の動きでは、補給が追い付かなくなる危険も」
「それは大丈夫です。女王陛下とアルフレッドに依頼して、北方方面軍や東方方面軍の騎兵隊を補給部隊に転化して、補助してくれることになっています」
少将はあまりの手際の良さに苦笑いしながら頷いた。
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