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第143話 ホームレス、出陣する

 ザルツ公国は奇襲を敢行しヴォルフスブルク帝国の領土を侵略した。

 国境警備隊を撃破し、領内に進攻したザルツ公国を撃破するために俺の部隊は出陣する。


 ヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団の初陣だ。結成されてから1年間猛訓練をしてきた部下たちの士気は高かった。


 ザルツ公国は国力的な劣勢を戦力の集中でカバーしていくようだ。ほとんどの戦力を南部戦線に集結させて、快進撃を続けていく。


 第1遠征旅団の役割は、後退し続けている南方方面軍を助けてザルツ公国主力を撃破することだ。そして、ついに航空魔導士隊同士の戦いも始まるな。


 すぐに南方軍のグリツァー少将と合流した。


「クニカズ准将。応援に来ていただきありがとうございます。私が南方方面軍司令のグリツァーです」


「少将。よろしくお願いします。現状は?」


「かなりまずいですね。正面の兵力差はこちらが2万に対して向こうが3万。向こうには50ほどの航空魔導士隊がいるようです」


「なるほど……」


「現在は山岳地域を利用した防衛戦術に切り替えていますが、航空魔導士隊の猛攻で損害が増え続けています」


「ならば、さきに敵の航空戦力を叩きましょう」


「ですが、第1遠征旅団の航空魔導士を入れても、こちらは30です。数的不利ですが大丈夫ですか?」


「少将。航空戦力は技術力の差がはっきりと戦力の優越になる。戦力差が10倍以上であれば話は別ですが、2倍にも満たない差ならこちらでひっくり返してやりますよ。第1航空魔導士隊は、比喩ではなく、正真正銘の世界最強部隊ですから」


「なっ……」


「航空魔導士隊は俺に続け。陸上部隊の指揮は、クリスタ達に任せる。暴発しないように抑えておいてくれ。制空権を確保次第、反撃に入るぞ」


「了解」

 クリスタは笑う。


「まさか、准将自ら最前線に立つのですか?」


「当たり前ですよ、少将。これが初陣ですからね」


 そして、俺たちは敵の航空魔導士隊に向けて飛び立った。


 すでに、敵の地上攻撃は始まっていた。だが、地上攻撃が行われている状況はスキが多い。狙うなら今しかない。本来なら後方に回り込んで攻撃するのがセオリーだが、敵に奇襲が通用する今なら正面からの攻撃でも有効だろう。


 俺の合図で、爆撃魔法が一斉に放たれる。この場合は味方を巻き込むこともないので、広範囲に逃げ場がなくなる爆発魔力の方が効果は大きい。


 敵の航空魔導士隊は爆発に巻まれて次々と落ちていく。


 問題はここからだ。この攻撃をかわした相手が本命。向こうのエースだ!!


 俺は次の攻撃に備える。

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