第14話 ホームレス、妖精に嫉妬される
俺が王女様との夕食が終わり意気揚々と部屋に帰った。用意された部屋は客人用でとても豪華だった。ビジネスホテル以上にふかふかのベッド。アンティーク調の調度品。うん、異世界なのにこんなに贅沢させてもらっていいのだろうか。まぁ、ある意味で俺は救国の英雄なわけだし女王陛下からも感謝されているからいいよな!
ベッドにダイブして、俺は久しぶりにゆっくり眠れることを喜んだ。思い返せばここ最近はずっと危機一髪状態だったな。ホームレス状態から始まって、王国最強の兵士との決闘。そして、そのまま最悪の歴史イベント発生を未然に防いだ。
俺の新しい人生は、最高のスタートを切ったと言えるだろう。女王陛下とも良い仲になれそうだし……もしかしたら、逆玉の輿とかあるかも!!
家族に見捨てられて、延々とニートをしていた時と比べたら最高の始め方だ。
この人生では、俺は自分の居場所を作ってやる。
そんな浅はかな妄想をしていたら、ターニャを入れていた右胸が熱くなってきたことに気づく。
いや、燃えるように熱い。
なんだこれ……
俺は大慌てでダンボールの破片を取り出した。
「なんだよ、どうしたんだよ! ターニャ。寝ぼけているのか??」
ターニャはダンボールから人の形に変わった。
「へぇ、どうして私が怒っているのかわからないんですか。いい度胸ですね」
ダンボールの妖精さんは激怒していた。
うん、なんか顔を真っ赤にしていらっしゃる。
「落ちつけ!! いきなり出てきてどうして怒っているんだよ? もしかして、お腹空いたのか。なら、食堂にお願いしてお前用の食事を……」
「このボケーー! なんで、私が豪華ディナーに嫉妬して怒っていると思っているんですか? 私は最強クラスの妖精ですよ!? ご飯を食べられなかったくらいでそんなに怒りません」
「でもさ、悪かったよ。たしかに、お前がいるのに、仲間外れみたいにしてしまったよな。そうだ、お詫びの印にこれやるよ! ターニャのためにデザートを残しておいたんだ。ドライフルーツとクリームのパイだよ。めちゃくちゃ、美味しそうだろ? これを食べながら落ち着いて話をしようぜ」
「私のために、残しておいてくれたんですか?」
ちょっと勢いが止んだ。ちなみに教会にお世話になっていた時はパンを半分残しておいてターニャにあげていた。彼女は小食だから、それで十分らしい。
「うん、そうだよ。やっぱり、俺にとってはターニャしかいないし!」
だって、ターニャがいなければ、俺はここに来ることできなかったし……
たぶん、路上で凍死していた。
だから、彼女には感謝しても感謝しきれない。
ある意味、一番特別な相棒だ。
「じゃあ、私がセンパイの一番ですか? 女王陛下よりも?」
「当たり前だろ! お前が一番に決まっている」
この世界で一番最初に出会ったのはお前なんだからな! 順番から考えればターニャが一番に決まっている。さっき飲んだワインのせいでちょっとだけ思考がまとまらないが、それだけは断言できる。
「じゃあ、許します。だから、少しだけおしゃべりしませんか?」
「ああ、俺もお前のことを知りたいからな。話そうぜ」




