第135話 1対100
そして、訓練は始まった。俺が鍛えた魔導士たちも防御に回っている。気を抜くと撃ち落とされるな。
俺は衝撃波だけを使うことにしていた。これだけなら被害は最小限で抑えられるし、隊員たちがケガをするリスクもほとんどない。
さすがに火炎魔力とかを使うと甚大な被害になるからな。ちなみに、守備隊は本気で迎撃してくる。結構なハンディ戦だ。
「突入進路は確保したな」
俺は東側から防御陣地に近づいた。しっかりと訓練していた魔導士たちに気づかれにくいように低空で接近する。これはレーダーを回避する動きと一緒だ。魔力も基本的に波のようなものだから、この世界が丸ければ地平線や障害物によって魔力による索敵が邪魔される。
おそらく前世知識がある俺だけが理解している原理だ。よって、この接近法はヴォルフスブルクだけが独占している知識になる。
だが、近づけば近づくほど気づかれる可能性は高まる。
俺は気づかれるギリギリの距離で一気に急上昇した。これで敵の意表を突くことができる上に、見下ろす形にすれば攻撃は当てやすくなる。
「敵、急上昇!!」
「どうしてこんなに近くに来るまで気づかなかったんだ」
「准将は地面すれすれを飛んで高速で移動するんだ」
「攻撃準備! すぐに撃ち落としなさい」
「対空砲火、撃ち方始め」
だが、俺の動きが奇襲になっているため、散発的な迎撃になる。これならダンボールの妖精の力を借りずに、スピードを上げるだけで対処できた。
そして、高度を上げて敵の攻撃が届かない場所まで上昇する。これで直下の敵を蹂躙可能になった。
高高度爆撃。
魔力制御がうまくいかなければ、ただ無差別に攻撃をばらまいているくらいの意味のない攻撃になる。だが、妖精の加護を持つ俺ならそれが可能だ。
「敵直上!!」
「攻撃が届きません」
「魔力部隊による精密射撃には準備時間がかかります」
「閣下の攻撃が来るぞ」
「みんな伏せろ」
「救国の英雄といえども、たかがひとりの魔導士だ。何ができる」
「直上からの攻撃来ます。数、40!!」
「うわああぁぁぁっぁああああ」
「なんという精度だ」
一度衝撃波を食らった兵士は戦闘不能扱いになる。俺は魔力の衝撃波を同時制御で放った。魔力の衝撃波はこちらの世界では基本となる技術のため、たぶん50以上制御できると思う。ただ、今回は魔導士隊を壊滅させるために精度重視で撃っている。
これでほとんどの魔導士は無力化した。対空砲火すら届かない状況ならもう負けることはない。
ラガ大佐はすぐに状況を判断し、降伏の意思表示を示す白旗を上げた。
※
「准将が下りてくるぞ」
「100人の兵をひとりで圧倒しやがった」
「神か悪魔か」
「鬼神だ」
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