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第134話 ホームレス、訓練を始める

 そして、訓示は終わり訓練が始まった。


「では、諸君たちには航空魔導士隊の攻撃力というものを味わってもらう。それを味わなければ、そもそも協力することはできないだろうからな」


「では、どのようなことを」

 元近衛騎士団副団長のラガ大佐は、俺に問いかける。彼女は、陸上部隊側の責任者的な役割を担ってくれている。彼女もやはり有力貴族の娘で、ブロンドの長い髪をポニーテールで結っている。パワーこそないが剣技のスピードは1級品でアルフレッドの信頼も厚い女性だ。


「では、騎士団とこちらが選抜する魔導士、合わせて100名を要塞に見立てた高地の陣地に配備してくれ。それに対して、魔導士が空から攻撃をかける。はっきり言おう。先の二公国との紛争で、こちらはもう要塞は無用の長物だと知らしめた。軍事革命が起きているんだ。だが、まだ要塞を必要だと考えている現場の者も多いだろう。だから、この訓練で身をもって体感してもらう。ラガ大佐、地上部隊の指揮を執ってくれ。そちらは本気で撃ち落とそうしてもらって構わないからな」


「もちろん、航空魔導士隊の指揮官は閣下ですよね」


「ああ、そうだが……ひとつだけ間違っている」


「なにがですか?」


「航空魔導士隊ではない。ひとりの航空魔導士が相手だ」


「まさか、閣下ひとりで!? 1対100ですよ」


「一か所に100人が密集しているのであれば、航空魔導士にとっては単なる的だよ」


「撃ち落とされても文句は言わないでくださいよ」


「大丈夫さ。キミたちにけがをさせるつもりはない」

 少しだけ大佐はムッとした。年齢はおそらく前世の俺くらいだろうが、鍛え上げた体によって若く見える。


「本気で撃ち落とさせていただきます、閣下!」

 彼女はそう言ってコツコツと靴の音を立てながら部下を集めに消えていく。


「大丈夫なんですか、クニカズ閣下?」

 秘書官のアリーナは心配そうに話しかけてきた。


「大丈夫だよ。同期しかいない時は閣下はいらない」

 脇に控えていたクリスタは噴き出すように笑う。


「クニカズらしい荒療治だな」


「ふたりともラガ大佐は、どういう風に対策すると思う?」


「きっと、方円陣を作って周囲に対空兵器で固めてきますよね」


「それが基本だな」

 俺は笑う。


「基本に忠実な指揮は、大きな失敗をする可能性は低いが……逆に読みやすくもある。さらに、常識は規格外の存在に食われる。それが歴史の定跡だ」

 クリスタは俺の考えを代弁してくれる。もう、阿吽(あうん)の呼吸だ。


 さあ、革命を証明しよう。

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