第133話 ホームレス、最強部隊の指揮官になる
そして、俺はヴォルフスブルク帝国軍第1遠征旅団の初代司令官に任命された。俺の指揮下には、近衛騎士団と王都防衛師団から選抜された精強な3600名の兵士と今まで率いてきた第1航空魔導士隊を同時に率いることになる。
「クニカズ准将、第1遠征旅団への訓示をお願いします」
副司令官のクリスタ大佐は笑いながら言う。正直に言えば、クリスタは作戦課に残しておきたかった気持ちもある。だが、優秀な事務能力は代えがたい。新しく編成される最強を約束された部隊だ。頑張らないといけない。
「原稿は一応用意しておいていますが、どうしますか、閣下?」
さらに、秘書官として同期のアリーナ少佐が来てくれた。アルフレッドも俺ができる限り仕事をしやすい環境を整えてくれたようだな。
「ああ、悪いが、今回は自分の言葉で語りたい」
「わかりました」
※
基地の広場には、旅団のメンバーたちが集まっていた。
司令官の任に就いた最初の挨拶だ。
「諸君、私がこの旅団の初代司令官となったクニカズだ。よろしく頼む」
いかつい軍人たちが俺を見つめていた。
『あらが救国の英雄か』
『おそろしいオーラだ。世界最強の魔導士ってのは本物だな』
「それでは、キミたちは近衛騎士団や王都防衛師団の中でも特に優秀な人材が集まっている。つまり、新帝国最強の部隊となる宿命を帯びている。キミたちのさらなる活躍に期待したい。今後の新帝国は今以上に困難が続くだろう。周囲は敵だらけだ。航空魔導士は大陸中に広まったことで戦略は大幅に変わる。我々が待ち構えているのは困難の連続だろう。だからこそ、選ばれた我々は、新しいスタンダードを作っていかなくてはいけない。内外に我々が作った基準を行動で示すのだ」
兵員たちはうなずいた。
「それでは新しく結成された我が旅団のために、新しい標語を考えてきた」
部隊ごとに標語なんて日本っぽいけどみんな目を輝かせている。
『精鋭無比』
清書は字がうまいターニャに頼んだ。
兵たちはゴクリと生唾を飲んでいるようだ。
「意味は分かるだろう。我々は比較対象すら他に与えてはならない。他を圧倒するほどの存在にならねばならない。これからの諸君たちの奮戦に期待する」
「「「はっ!!!!」」」
兵士たちは身を引き締めた。
まずは、皆には航空と陸上部隊の連携を体感してもらおう。俺は訓練メニューの精査に入った。




