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第127話 大ヴォルフスブルク会議

「それでは、ただいまより大ヴォルフスブルク会議をはじめたいと思います」

 王都でついに周辺領邦を集めた会議が開かれた。俺は女王陛下の護衛として会議に参加している。もちろん、会議の議長は女王陛下だ。


「まずは、議長国として皆さんの参加を心より感謝いたします。今回の議題は、従来より悲願だった大ヴォルフスブルクの復活にしたいと考えております」


 かつて、大陸の覇権国家であった神聖ヴォルフスブルク帝国は、魔力発展前までは圧倒的な力を保有していた。しかし、魔力の発展でそれに乗り遅れた帝国は周辺諸国とのパワーバランスが逆転されてしまい、ついには現在の列強国との戦争に敗れて小国に分裂させられた経緯を持つ。


 神聖ヴォルフスブルク帝国とローザンブルク・グレタ帝国・マッシリア王国の連合軍によるヴォルフスブルク戦争だ。


 バルミリオンの戦いに敗れたヴォルフスブルクは完全に分裂させられて、神聖ヴォルフスブルク帝国の中核を担っていたヴォルフスブルク王国が余計な力を持たないように周辺諸国が包囲網を敷いて、飼い殺しにしてきた経緯がある。


 だからこそ、ゲーム開始時のヴォルフスブルクは絶望的な状況になっていたわけだな。


 だが、俺たちはその包囲網の(くさび)を解き放ったんだ。


 もう誰もヴォルフスブルクの統一を妨げる者はいない。周辺領邦もザルツ公国・シュバルツ公国・ボルミア公国以外の小国は、列強国の事実上の植民地のような扱いを受けている。いま、ローザンブルクがこちらから手を引き、グレア帝国が静観を決めているような状況であればこちらに加わりたいと思う領邦の方が多いだろう。


「異議あり! まだ、時期尚早だ。仮に、大ヴォルフスブルクが復活すれば、より政情は不安定になる。大陸すべての破滅すら考えられる」


 反対したのはやはりザルツ公国代表だった。この国はグレア帝国との結びつきが深い。ヴォルフスブルクとも険悪な領邦だからな。


「では、いつならよいのですか」


「統一を前提に考えること自体が間違っている。ある程度の安定があるにもかかわらず、あえて波風を立てる必要はないと言っているのだ」


「それは、小国に一方的な犠牲を強いている今の状況の援護と受け取っておきます。ですが、弱者を斬り捨てて築く平和が本当の平和なのでしょうか」


 勝負あったな。すでに、ほとんどの小国たちは、大国の代弁者であるザルツ公国を冷たい目線で見ていた。


「うるさい。このような会議は無駄だ。我が国は退出させてもらう!!」


 続く国が出てくることを期待していたようだが、ザルツ公国代表の後には誰も続かなかった。

 後ろを振り返って蒼白な表情を浮かべる代表は、怒りをあらわにしながら会場の外へと出ていった。

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