第126話 大ヴォルフスブルク憲章
そして、宰相を排除した後、速やかに憲法を成立させた。
国権と最高裁、議会の三権分立を明記して近代国家への脱皮を進める。
女王陛下は最高元首に君臨し、三権の助言によって国政を運営する。
現状では女王陛下が優秀過ぎるので、彼女がすべてを決める体制を維持していきたい。よって、助言程度に押しとどめた。その代わり、三権の長が全会一致の場合は元首はそれに従わないといけないというただし書きを加えた。
これで戦前の日本のように軍隊の暴走などを防ぐこともできる。
憲法の後はついに超大国建国だ。ヴォルフスブルク王国を中核に周辺領邦を取り込んだ大帝国の建設だ。
すでに、周辺領邦の中でも最も巨大だったシュバルツ公国とボルミア公国を軍門に降したことでほとんどがこちらに屈する状況となっている。
各公王たちは、大帝国で公爵として厚く遇する。安全保障は新帝国が保証することで平和的にこちらとの合併を認めさせるつもりだ。
そして、それを条文にしたのが、リーニャに作ってもらっている「大ヴォルフスブルク憲章」だ。
・新帝国への平和的な合併
・各公国に属している貴族たちへの厚遇の確約
・新帝国軍による安全保障
これらを柱にして憲章は作られる。これが成立すれば、各公国が保有している優秀な人材も継承できる。実際、ヴォルフスブルクの人材だけではグレア帝国に対抗することはできないだろう。
つまり、人材の層の薄さは、他国から補充する。戦略ゲームの基本的なやり方をおこなうってことだ。
「ですが、クニカズ? これでは独立を維持したい保守派を怒らせることにはなりませんか」
リーニャは心配そうに聞く。
「だろうな。だが、反乱がおきた方がチャンスだ」
「えっ?」
「包囲網の中核であったグレア帝国が避戦派を貫いている以上、他国は介入できないはずだ。そのうちに反乱軍を共通の敵にして、新帝国内部を一致団結させる。おそらく、反乱軍は新帝国に加わらずに独立を維持するつもりであろうザルツ公国あたりと手を組むだろうから……」
「それは口実にザルツ公国まで併合してしまうんですね。そこまで……」
さすがにあくどい方法だとは思っていた。だが、そうしなければグレア帝国との将来起きるであろう大戦に勝てる見込みはない。
「ああ、ここからは覇道だ。自分でもわかっているよ」
「いえ、私はそこまで計算していることに驚いただけで……でも、たしかにこれなら……」
「ああ、新帝国は安泰だ」




