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第116話 ホームレスvs怪物②

 扉を開けると、銀髪の朗らかな笑顔を浮かべた男が豪華なソファーに座っている。

 後方には完全武装された騎士たちが控えていた。


 まるで、20代に見える銀髪の男が大陸最強国家の宰相とは初見ではわからないだろうな。

 40代後半になるはずなのに、若々しさを保っている。


「宰相閣下。私が今回閣下の出迎えを担当するクニカズと申します。以後お見知りおきを……」


「ああ、わかっているよ。お噂はかねがね。ニコライ・ローザンブルクを打ち破った世界最強の魔導士に会えるなんて光栄だね。今回は突然の来訪にもかかわらず、リーニャ公爵令嬢とともに出迎えをしてくださり感謝を申し上げる」


 まずは、儀礼的な感じの入り方だな。そして、俺はこの部屋に入った瞬間から、悪魔のささやきが聞こえていた。目の前の宰相をこの部屋ごと吹き飛ばしてしまえばいいのではないか。そうすれば、グレア帝国とは開戦となるが、宰相がいない帝国なら勝算はある。


 だが、そうすれば……


「どうしたんだ、クニカズ大佐? 気分でも悪いのかな。とても青い顔をしているよ」

 宰相は、俺を心配するように近づいてきた。そして、耳元でこうささやく。


「(それとも、私を暗殺する機会でもうかがっているのかね? 私をここで殺せば、確かにグレア帝国との戦争には勝てるだろう。だが、数百年は続く汚名をヴォルフスブルクは背負うことになる。それはあまりにも重いぞ。それでも構わないなら、やりなさい)」


 そう言うと俺の耳から笑いながら離れていった。まるで大悪魔だな。ここで宰相を暗殺すれば、ヴォルフスブルクは覇権国家になれるかもしれないが、周辺諸国の信頼は完全に失う。軍事的な優位性がなくなればすぐさま、ライバルに滅ぼされるだけの国になる。


 その選択肢は現実的に選べない。

 そして、この人は自分の命すら国家のためには投げうることもできる政治家か。仮に、宰相を暗殺してグレア帝国を打ち破っても、和平案はこちらが大きく譲歩しなくてはいけない。宰相暗殺は周辺諸国すべてとの開戦を意味するからな。


 自国を守るためなら、簡単に自分の命すら捨てられるほどの覚悟を持っている。


 敵としては最も厄介な相手だ。


「さて、明日の交渉に備えて、本日はこの部屋でゆっくりしたい。大佐はウィスキーが好きだと聞いた。土産に持参したから、どうだい一杯? 僕はキミのことをもっと深く知りたい。付き合ってくれないかな?」


 まるですべてを見通しているかのような純粋な目に俺は恐怖すら感じながら「喜んで」と短く答えた。

明日は更新お休みです!

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