第107話 併合
そして、防衛線を突破したヴォルフスブルクは敵国の首都になだれこんだ。アルフレッド指揮のもとで攻城戦を制した王国軍は、敵国首脳部をほとんど捕虜にした。
ボルミアの首都が陥落したことで、ボルミア―シュバルツ連合軍は継戦能力を完全に失い降伏。
シュバルツ公国も本土は無事だったが、主力部隊が壊滅したことでこれ以上の戦いをおこなうことは不可能になった。
そして、講和会議が開かれた。
出席者は、政府の全権である女王陛下、最前線の責任者であるアルフレッド、そして俺だ。
ボルミア―シュバルツの両公王は恐怖に駆られながら講和会議という名の降伏文章調印式にやってきていた。
「それでは、こちらからの要求をお知らせします」
すでに年上の両公王を威圧していたウイリーは単刀直入に要求を突きつける。ちなみにこの要求を跳ねのけようものなら、講和会議はご破算となり戦争が継続する。
敵国は継戦能力がほとんどないため、より悲惨な状況になるってわけだ。
「まずは、今回の総責任者である両公王陛下たちは、退位してください」
「「なっ!!!!」」
ふたりの中年公王は席から飛び上がるように立ち上がる。
「もちろん、戦争を続けたければ跳ねのけていただいても構いませんが?」
「ぐぬ」
女王陛下の冷静な一言によって悔しそうにふたりはうつむきながら座り込んだ。
「もちろん、この要求に従ってくだされば、命の保証はさせていただきます。ただし、次期公王はこちらが指定させていただきます。両公王陛下とは遠戚になりますが、我がヴォルフスブルク王国のボール公爵です。彼にはボルミア―シュバルツ公国の公王を兼務してもらいます」
ボール公爵は、女王陛下のいとこらしい。両公王の遠戚にあたるので、公王継承権も保有している。だから、都合がいい。公爵を一時的に擁立して、平和的に両公国を併合するつもりらしい。これなら他国からの干渉する余地もなくなり、誰にも邪魔されずに公国を手に入れることができる。
恐ろしい政治力を発揮していた。
「これでは事実上の併合ではないか」
ボルミア公王は無念そうにつぶやいたが、拒否などは許されていないことを理解して蒼白な顔になっていた。
「だが、拒否はできない。これであの若い女王が考えた策だとするなら、末恐ろしい……」
シュバルツ公国は、震えながらペンを持ち降伏文章に調印する。
こうして、2つの公国はヴォルフスブルクに併合された。
これで国力的にも列強国に匹敵する大国が誕生したことになる。
歴史は新しい流れに向かって動き始めた。




