第104話 ホームレス空中戦に突入する
「できる限り、低空を飛べ。敵の見張りに気づかれるなよ!」
敵は探索魔力を使っておそらく警戒しているだろう。だが、低空は索敵の死角になりやすい。木や山などの障害物によって魔力が邪魔をされるからな。こう考えるとレーダーと一緒だ。球面上の地球では、常にレーダーの死角は生まれる。実際、アメリカ軍が使っているトマホーク巡航ミサイルとかは敵に感知されないように低空で飛行するように調整されているそうだ。
俺たちの攻撃は、敵に気づかれなければ気づかれないほど効果が上がる。敵は空中から奇襲を受けるという心理的なプレッシャーと無警戒の場所から爆撃されることで被害は大きくなる。
「隊長、砦が見えました! 対空砲火などはありません!」
「よし、総員上昇して魔力を叩きこめ。狙うのは大砲と魔導士だ。さきに向こうの迎撃能力を奪う!」
「「「了解!!!」」」
俺たちが急上昇したことで、敵の少数に気づかれたようだ。散発的な対空砲火が飛んでくるが、すべて俺の防御魔力が叩き落している。
俺は初回の攻撃には参加しない。隊員たちの防御だけに集中する。
「撃ち方はじめー」
俺の合図とともに、目視できる対象に向けて攻撃を開始した。慌てて索敵魔力を発動した魔導士たちは格好の標的になる。魔力の発動によって、自分の場所も俺たちに教えてくれるからな。
『敵の奇襲だ!』
『なんだと、まだ第一防衛線突破されてから時間が経ってないだろう』
『じゃあ、この攻撃は何だよ!?』
『うわああぁぁっぁぁぁああああああ』
『左翼の火砲小隊、連絡途絶』
『右翼の魔導士隊もだ!!』
『動けるやつは早く対空砲火を……うわああぁぁっぁぁぁああああああ』
阿鼻叫喚の声が聞こえる。
「隊長、初動の攻撃は大成功です!!」
「よし、次の攻撃を準備をしろ。そろそろ本格的な対空砲火がはじまるかもしれない。俺がすべての攻撃を叩き落す。逆探知して隠れている火砲を破壊しろ!」
「「「了解」」」
そして、第二波攻撃の準備をしてきた瞬間……
俺の中の妖精が叫んだ!
『(センパイ、6時の方向から高い魔力を感知しました!! すごい速度で接近中)』
「なんだと!! まさか、航空戦力か!?」
まさか、こんなに早く俺たちの秘密兵器に対応するとは……
向こうの魔導士たちは確認できるだけで5。彼我戦力差ならこちらが有利だが……俺以外の隊員はみんな地上攻撃の準備中。
つまり、放っておいたらただの標的だ。だが、この状況で航空攻撃に切り替えたら、それでも不利だ。地上攻撃に割り当てることができる攻撃回数が減るし、作戦目的は達成できない。
つまり、俺一人で5人を倒すしかない。
この世界では史上初となる航空戦が勃発した。
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