第100話 ホームレス要塞攻略を命じられる
俺たちは補給基地で休息した後、前線のアルフレッド達と合流した。
今回は王都からアルフレッドが総指揮官として赴任していた。軍務次官が特命を帯びて、第1軍団総司令に任命されて前線に来たということは……
女王陛下と軍中央は、この1年間で積み重ねた研究の成果を見せろと言っているんだろう。
だから、俺と最も相性がいいアルフレッドを急遽、総司令官に配置換えしたんだ。
俺が最前線を壊滅させたことで、逆にヴォルフスブルク軍が攻勢に出ていた。
すでにヴォルフスブルク軍主力は、敵国の国境を越えて進攻していた。
敵国の防衛線は、崩壊寸前だ。敵国の主力は崩壊しているため、じきに突破できるだろう。
「どうするアルフレッド? 最後の一撃を決めに行くか?」
航空魔導士の火力は空飛ぶ砲兵みたいなものだ。一方的に空中から攻撃される状態は、損害も大きいが敵の指揮も下げる。すでに崩壊寸前の防衛線のとどめになるだろう。
「いや、クニカズ。キミたちはまだ温存する。ここは地上兵力だけでも突破可能だからな。貴重な魔力は次のラインを突破する時にしたい」
「だろうな」
俺たちは目の前の地図を凝視する。
「アルフレッド、おそらく敵の防衛線の本命はこの天然の要害だろう。ここを放置して進めば、俺たちの補給路には甚大な被害が出る。攻略は必須だ」
「うむ。だが、この山城を攻略するには大変な被害が出るぞ。ここまで強固な陣地を正攻法で攻略するには敵兵力の10倍は必要だろう」
たしかにそうだ。高地や山に籠もる兵を倒すには、相当な労力が必要になる。
戦国時代の城は、ほとんどが山城だった。
例えば、鎌倉時代末期に発生した赤坂城の戦いがある。
幕府打倒のために挙兵した伝説的な英雄・楠木正成が、鎌倉幕府軍と山城である赤坂城で激突した。
500程度の兵力で山城に籠城した楠木軍を幕府軍は1万人で包囲したが、地形を有効活用した楠木軍に翻弄されて幕府軍は1000人以上の被害を被ってなおも力技では陥落させることができなかった。
他にも、日露戦争中の旅順要塞攻防戦でも、高地を利用したロシア軍の防衛陣地は日本軍を苦しめて死傷者が6万人にも出血を強いた。
高地を要塞化することは戦争において最も重要なことのひとつだった。
だが、今は違う。
「アルフレッド……要塞は、空中からの攻撃の前では無力だ。俺の世界における歴史の結論をお前に見せてやるよ」
「ああ、楽しみにしている。第一防衛線突破後は、敵の防衛線が再構築される前に潰してくれ」
俺たちは地図を前にうなずいた。
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