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第10話 ホームレス、無双するってよ

「大変です。ザルツ公国軍守備隊が国境を越えました!! こちらに向かって進行中です」

 見張りを担当していた兵士が慌てて伝令に来た。


「なんだと!? 数はどのくらいだ?」

 ゴーリキさんが確認する。

「約300です」


「こちらの兵力は120……まずいぞ、圧倒的不利だ」

「やっぱりあいつら戦争の準備をしていたんだな」

「くそ、こうなったら砦を枕に玉砕してやる!!」


 全体的に悲壮感が漂っている。


「いや、待ってくれ。みんな、これはおかしいよ」

 俺はみんなを落ち着かせるために叫んだ。


「どういうことですか、クニカズ様?」

 アルフレッドはやはり冷静だ。


「だってさ、普通、戦争を始めるなら一気に大軍で来るよな。下手に戦力を逐次投入するのは愚行だろ? 普通は宣戦布告と同時にグレア帝国軍とともに一気に侵攻してくるはずだ。それなのに、敵は国境警備隊の一部だけ。おかしいだろう」


「たしかにそうですが……」


「だから、これはたぶん現場の暴走だ。きっと、大砲の攻撃が効果がなく血気盛んな前線指揮官が暴走しただけですよ。それならこっちにも大義名分があります」


「どういうことですか?」


「我々は不法に国境を越えた犯罪者を捕まえるだけです。国境警備隊をほとんど捕虜にしてしまえばいいんですよ。逮捕という名目でね。だってそうでしょう? あいつらは暴走して正式な命令もなく国境を越えてしまった。俺たちは攻撃を仕掛けられた側で、戦闘はヴォルフスブルク内で行われた。捕虜もこちらに収容されている。どう考えてもザルツ公国側の不法行為です。証拠もそろっていて、捕虜たちにも証言をさせれば国際的な批難を浴びるのは公国側です。いくら同盟関係があっても、グレア帝国ですら、こんなに証拠があれば擁護できないはずですよ」


「それはそうだが……数では向こうが有利だ。どうやって捕虜にするんだ? 砦を破壊されては意味がないぞ」


「大丈夫ですよ、隊長! 俺が何とかしますから……援護してくれるよな、アルフレッド!!」

 ここで下手に守備隊に犠牲者が出れば、歴史イベントに突入しかねない。

 ここは俺とアルフレッドが解決するのが最適解だ。


 ※


「そこのザルツ公国人たち……止まりなさい。あんたたちは、何の許可もなく国境を侵犯した。これは不法行為だ。武装解除して大人しく降伏しなさい」

 俺は、ダンボールをマイク代わりにそう通告した。


『あらあら、センパイ。今日はずいぶんと勇ましいですね』


「ターニャか。ああ、この前のアルフレッドとの決闘で戦い方はよくわかったからな。あれだろ、このダンボールを空中に飛ばして遠距離で攻撃したり盾にすればいいんだろ。簡単だ!」


『カッコイイ! もう手馴れですね。じゃあ、お手並み拝見と行きますか!』


「それにザルツ公国は、ヴォルフスブルクの次に弱い国だ。公王くらいしか戦闘向きの人材いないしな。こんな辺境に公王がいるわけないだろ! 楽勝だぜ」


『うわ~さっきまでのかっこよさはどこにいったのくらいダサいセリフ~ 雑魚専じゃないですか』


「俺は勝てる戦しかしないんだよ」


 敵がダンボールの攻撃範囲にやってきた。よし、そろそろ攻撃を始める!


「アルフレッド! 俺の撃ち漏らした敵を頼むぜ!」


「了解」


「慌てるな。たかが敵は二人だ!」

「あんなヒョロヒョロの男に何ができる!」

「殺せ!!」


 俺のダンボールが火を噴く。まぁ本当に火を噴いているんだが……


 ダンボールを高速で動かすことで、摩擦熱から火を噴き出して燃えるブーメランみたいになっていた。ブーメランは全体攻撃。そう相場が決まっているんだ。


 俺の燃えるダンボールブーメランが雑兵を蹴散らしていく。

「ぐへ……」

「なんだ、これ逃げても追いかけてくる……うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「あんな茶色い紙なんて剣で叩き切ってやる! なんだ、剣が折れて、来るなぁ。ぎゃあ」

「誰か魔力で止めろ!」

「ダメだ、氷の壁を作っても貫通して、ごふっ」

「これを操っている男を狙え、きっと凄腕の魔術師だ。魔術師なら一撃で倒せるだろ!」


 ブーメラン攻撃をかいくぐって、なんとかひとりの兵士が俺に槍を向けた、だが、それを見逃すような男じゃないよな? アルフレッド!!


「クニカズ様には指一本触れさせんぞ!」

 まさに、一刀両断。敵の兵士は一瞬で崩れ落ちた。


 俺とアルフレッドのコンビはこうやって次々と敵を無力化していく。まるで、バディ物の映画みたいだ。アルフレッドは優秀で、俺の撃ち漏らした敵をことごとく潰していった。


 これはきっと、のちに「王国の双璧」とか言われるパターンだぜ。そんなことを考えながら、俺たちは敵兵を制圧していく。


 ダンボールは誘導式ミサイルのように追尾して、逃げる敵を蹂躙した。

 数で言うなら150倍の差があるはずの敵兵は瞬く間に倒れていき、俺たちは勝利をつかんだ。


 ここから俺の伝説が始まる。

読んでいただきありがとうございます!

おもしろかったらブックマークや感想、高評価などいただけると嬉しいです!


引き続きお楽しみください。

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