エピローグ:笑う門には……
「で、どうだった?」
現代に戻ったオレは、3日前に入った喫茶店で再びエミットと対峙していた。既に空の食器が山のように積まれている。……相変わらずよく食うなぁ、コイツ。
「ん……。行けてよかった。今はホントに感謝してる。その……ありがとう」
「ふむ、素直で結構」
エミットはとどめとばかりに見ているだけで胸焼けしそうなほど巨大なパフェを頬張りつつ、満足げに頷く。
「それと……あの時、時間が止まったのってお前の力なんだろ? それも重ねて礼を言っとく」
「さぁて、何の事かしらねぇ~♪ あれはあなたのお母さんを思う気持ちがやった奇跡なんじゃない?」
ここまで来てしらばっくれても無駄なような気がするけど、これが彼女なりの優しさなのかもな。最初はどこの宗教団体の回し者かと思ったが、意外といい奴なのかも。まあ本当に神様かどうかはさておいて。
「さておかないでよ! 私は完膚なきまでに神様よ!! どんな一般人が人を過去へ飛ばせるってのよ!!」
「地の文を読むんじゃねえ! 神様かどうか以前に、小説が破綻するだろっ!!」
「神様は何でもあり! メタな発言も行動も許されるのよ~♪」
「神様だろうが何だろうが、登場キャラである以上はシステムに従えよ!!」
「あなたも立派にシステムを侵害してるわよ?」
「……むう」
つまりアレだ。『うるさいと叫ぶ奴の声が得てして一番うるさい』と言う奴だ。……大仕事終えて帰ってきたのに、何やってんだかオレは……。
「まあともかく、これでオレに用事はなくなったんだろ? じゃあオレは帰らせてもらうぜ。お礼にここのお代は出しとくから」
オレは伝票を持って席を立つ。値段を見ると軽く5桁だが、このくらいなら金をちょっとだけ残しておいたオレには充分払える。……そう言えば、前回の払いはどうしたんだろう? 何となく怖くて聞けないが。……と、そんな事を考えていたオレにエミットが声を掛けてきた。
「用事……? 何言ってんの? 用事はむしろこれからだけど?」
「は?」
「今回の活躍を受けて、あなたには『タイムパトロール』としてこれからも私と働いてもらう事に決定したわ。過去に飛んで歴史を正す仕事よ」
……え~と………コノボケナスハナニヲホザイトルンダ……?
「ちょっと待たんかいッ!! 何を勝手に決めてるんだお前は!? オレはそんな事やらねえぞ!!」
「安心して。あなた一人じゃないから。私はあなたが過去に飛んでる間、2人の人間を時間指定して過去に飛ばせるようになったから!」
「無駄にレベルアップしてんじゃねえよ!! オレの選択権は何処へ行った!?」
「実はあなたのパートナーはもうスカウト済みよ。入って来て~」
エミットが外に向かって声を掛ける。呼ばれて入ってきたのは……オレの見知った顔だった。
「し、信二!?」
「よう秋臣。お前こんな美人と知り合いだったんなら、俺にも紹介しろよ」
何やらピントのずれた事を言ってくるヲタク1号。欲しけりゃくれてやる。だからオレには金輪際近寄るな。
「さあ! あなた達は今日から『時空戦隊エミットレンジャー』よ! この世に蔓延る悪を倒して倒して倒しまくるのよ!!」
「何そのセンス0のネーミング! だからオレはやらねえって!!」
「エミット様は何でもアリ! エミット様、マンセー!!」
「何でお前はノリノリなんだ信二! こんなのに付いてったら身の破滅を招く事請け合いだぞ!!」
「よしっ! まずは江戸時代にタイムスリップよ! 打倒徳川幕府!!」
「ついでに埋蔵金の在処も吐かせちまいましょう姉御!!」
「ケンカ売る相手間違ってるぞお前ら! そんな事が出来るとは到底思えんが、もし出来たら現代は一体どうなると思ってんだ!!」
「あら、秋臣君なんとなくチョンマゲとか似合いそうね。あっちに行ったらお侍さんになりなさい」
「エミット様、一生付いて行くッスーーーー!!」
「人の話を聞けぇぇぇぇーーーーーーーーーッ!!」
拝啓オフクロ様。オレの受難は、暫く続きそうです―――――
どうも、この度は『Time Slip Innovation』を最後まで読んで下さってありがとうございました。新夜詩希です。
私は基本的に思い付きで創作をする性質でして、このTSも例に漏れず思い付きで作成した物語です。故にタイムパラドックスだの小難しい事は基本うっちゃっております。そもそも私自身がバカなので、そんなもん理解出来ませんし(マテ)。
まあそんなテキトーさの極みのような小説ですが、読んで下さった貴方の心に、何か一つでも残るものがあったなら、これ幸いでございます。
本編はこれにて終了ですが、もう1話、これまたノリで書いたアフターストーリーをご用意してございます。……まあちょっと読む人を選ぶような内容ですが……(苦笑)。
感想など入れて下さるととても喜びます。今一度、当小説を読んで下さってありがとうございました。次回作での再会を夢見て。