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2:事実は小説より……

「なっ……」




 ただ、絶句。目を閉じるまでは確かに喫茶店のテーブル席に座っていたはずのオレは、目を開けた途端、見知らぬ道端に佇んでいる。

 ……いや、見知らぬって事はないか。ここ、オレの住んでる街だ。ただかなり様相が違っていて一瞬判別が付かなかった。何となく、懐かしいって感じる。行き交う人々の中、周囲を見渡す。


『上手くいったみたいね』


 頭の中に直接エミットの声が響く。


「おい! これどう言う事だよ!」


 オレは周りの目も気にせず叫ぶ。いや、人目なんざ気にしてらんねーし。


『大声出さなくても頭の中で呼び掛ければ私と会話出来るわよ』


 そうなのか。それはそれで助かるが……って前提が間違ってるぞ、オレ。誰の所為でこんな事になってると思ってんだ。取り敢えず近くのベンチに腰を下ろし、エミットに問いかけてみる。


『説明しろよ! これ一体どう言う事なんだよ! ここは一体いつで、オレは何でこんな所にいるんだよ!』


『今あなたの居る所は、現代から16年半遡った1990年の12月23日の千葉県船橋市。そこに着いたのは私がコントロールしたからじゃなくて、あなたが潜在的に望んだからよ』


『船橋市』というのは、オレが住んでる街の名前だ。オレは生まれてこの方船橋以外の土地に住んだ事がない。道理で寒いと思ったら、12月なのか。


『潜在的に望んだ? どう言う事だ?』


『そんなの知らないわよ。あなた自身がその時代に用があったって事でしょ?』


 ……テキトーだなぁオイ。オレの方にはそんな時空を飛び越えなきゃならんほどの大それた用事、思い当たらんが。そもそも、それが本当ならオレまだ5歳だぞ?


『私の能力では、時間指定する事は出来ないの。どの時代のどの場所に行くかは飛ばされる本人次第』


『ほう。それは分かったが、どうやったら現代に戻れるんだ? もしかしてもう戻れないとか言わねえよな?』


『安心して。今からちょうど48時間経ったら自動的に戻るから。ただし、その48時間はこちら、つまり現代も同様に経過するし、過去であなたが何か重要な事をやったら現代にも何らかの形で現れるから。気をつけて行動してね』


 ……48時間。帰れる保障があるのかどうかはさておき、それまでどう時間を潰すのかが重要だな。メシ代は……何と持ちそうだが、この寒空の下、野宿って訳にもいかんだろう。何か夜露を凌げる方法を考えねば。…………うん? オレ、この超絶異常な事態に馴染んできてないか? ……まあ深く考えるのはオレの性に合わないが。


『いい? あなたがその時代に飛ばされたのは決して偶然じゃない。何か必ず理由があるはずよ。48時間で、それを探してみなさい。それじゃ、また明後日ね』


 そう言ってエミットは一方的に通信を途絶する。


『……おい! エミット! ……くそ!』


 もうあいつにオレの声は届いていないようだ。オレは悪態づいてベンチに寝転がる。ベンチに置き忘れてあったスポーツ新聞を確認してみても、今日が1990年12月23日である事は間違いないように思う。そこら辺の人間が総出でオレをドッキリにハメていなければの話だが。近くの電光掲示板に表示される時計はちょうど12:00を指そうとしている所だ。天気はよく、気持ちいい日差しを浴びながら思案に耽る。


 オレがこの時代に来た意味? それは一体なんだ? 思い返してみても、まるで出て来ない。オレが5歳の時、何があったっけ―――――?



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