ほしとねこ
小生はねこである。
うえをみたら、そらがくらい。
よるだ。
住宅街の端っこで1匹の猫が空を見上げていた。
この辺りをうろついている野良猫だ。
くらい、でも、くろい、じゃない。
小生のほうがもっともっと、くろい。
小生は知っている。
野良猫にえさを与えている人がいる。
いつも家のガレージに
餌を入れるお皿をいくつも並べて、
その周りを何匹もの猫たちが
時間になると集まって来るのだ。
ご近所さんから不満の声があるが、
その人はよほどの猫好きなのか
最近は砂の入ったトイレまで置き始めた。
おきたばかりの小生は
うんとのびをする。
ここはしずかなところ。
よるにんげんはこない。
小生はなんでも知っている。
そこまでするなら、飼えば良いのに。
とは言えないくらい猫の数は多く、
その餌を与えている人でさえ
全てを把握できていないであろう。
おとがきこえる。
にんげんのあしおとだ。
夜の住宅街は静かではあるが、
この道は通ると近道になる人もいる。
故に夜中であろうと
近くに大学があるために
遅くまで遊んだ若者や
コンビニに走る人などが通る事もある。
にんげんがきた。
なんでだ。
この野良猫はここら辺に来てから
まだ1週間も経っていない、
言わばしんざん者だ。
かわったにんげんもいるものだ。
どこから来たのかは
誰も知らないし、
猫だって自分がどこから来たのか
なんて、地図が読める訳でもなく、
本能かそれとも勘なのか。
女の勘はよく当たる。
残念なことにこの黒猫はオスだ。
いや、メスだからと言って
猫の勘なんてものは分からないが。
めのまえににんげんがきた。
かたまる。
じぃとみる。
それいじょうちかよるな。
野良猫は人間に見つかるとピタリと動かなくなる。
その後は、猫の気分次第で
えさが貰えると近寄ってくるのか、
水でもぶっかけられるんじゃないかと逃げていく。
水をかけるのはやりすぎだ。
動物愛護、なんたらの集団から苦情が来るだろう。
歩いて来た若い女性はその大学に通う学生だった。
桜が散りGWも過ぎたこの時期から
新しい生活にもようやく慣れ始めて
ちょっと通った事のない道に足を運んでみた。
生活が落ち着いてきたおかげで
それまでの疲れが一気に押し寄せてくる。
その、ちょっとした息抜きみたいなもの。
住宅街の道のど真ん中でのびをしている
野良猫を見つけて、彼女は素直に嬉しくなった。
しかし。
小生はそのばからたちさった。
にげたのではない。
こわくてにげたんじゃない。
けっして、ない。
野良猫は彼女を見つめていたが、
ぴゃっと逃げてしまった。
怖がらせてしまったんだろうか。
でも、また、会えるよね。
逃げた野良猫を視界から消えるまで見送る。
これから帰ったら課題を片付けないといけない。
野良猫は自由でいいなぁ。
そうだ、走ってみよう。
それくらいの自由なら自分にだってある。
はしっていたら、ちがう、
たちさった、小生は
ごはんをくれるおうちのやねにのぼった。
今日は昼間から天気も良く
雲一つない、月が綺麗に見える夜だった。
そらにひかる、おおきなまるは、
つき、という。
知っている。
あんなたかいところ
とどかない。
くらいそらをみる。
つきはまるくておさらみたい。
あそこからみるくが
こぼれてくれれば
どこにいてもいつでものめるのに。
そうだ、ながれぼしにおねがいしよう。
ながれぼしにおねがいすると
ねがいがかなう。
小生は、ちゃーんと知っている。
しかし小生はながれぼしをみたことがない。
まずは、ながれぼしがみれるようにおねがいしよう。
みるく、じゃない、
ながれぼしがみえますように。
まずはあのひかるほしに、おねがいする。
野良猫は空を見上げたまま動かない。
何を考えているのか、
人間から見たら見当もつかないが
大抵の人は
野良猫を長く見つめる事もなく
汗水流して、
勉学に励んだり仕事をこなす。
そんな苦労、野良猫は知りもしないだろう。
したをみたら、
さっきのにんげんがはしっている。
げんきなものだ。
でも、
にんげんもくろうしている。
小生は、知っている。
だって、
小生はなんでも知っているから。
はじめまして、初投稿作品です。よろしくお願いします!
近所にたくさんにゃんこがいて
「どんなこと考えてるのかな~」という妄想です。
人間と同じで、1匹1匹、個性のある子ばかりなんでしょうね。
想像するだけでも楽しいです。