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いのちをなんとかする  作者: 城塚崇はだいぶいい
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第2話 無宗教家の勝郎(かつろう)

『君はそういうの信じてないんじゃなかったの?敬虔なる科学教徒たる君が、幽霊なんて非科学的なものを信じているのかい?』

「科学教は幽霊について肯定も否定もしていない。つまり、幽霊は非科学的じゃない」

『そりゃぁ都合のいい宗教ですな』

「お前だって科学教の学校を卒業しただろ?俺と一緒にね」

『まぁ、そりゃね。ただ、この国には科学教の学校が一番多くて一番自然だったからそうしただけさ。僕は、聖書に書いてあることを鵜呑みにできるような狂信者にはなれなかったよ』

「聖書じゃない。科学教では教科書っていうんだ。それに俺だって、ただ単に鵜呑みにしているわけじゃぁないぜ。科学が起こした奇跡を目の当たりにして、科学からの十分なご利益を授かったから信じることにしたんだ。例えば今夜、俺たちはこうして明るい部屋で暖かく過ごしている。これは科学が起こした奇跡だろ?そして、お前だってその恩恵を受けている」

『電気、ガス、水道にはとても感謝してるよ。でもさぁ僕にはこの地面が球体だとか、太陽の周りをすごいスピードで周っているとか。そんな荒唐無稽な話を、本を読んだだけで <はいそうですか> って信じることはとてもできないね。君は実際に空まで飛んで行って地面が丸いこととか、すごいスピードで周ってることを見てきたわけじゃないだろ?それなのに、本に書いてあったというだけで信じてしまっているんだろ?これはもう狂信者といっても過言じゃないよね』

「科学の便利なところだけを信じる。全く、都合がいいのはどっちだよ!ただね、科学教の素晴らしいところはそこでもある。普通の宗教は信じる者のみを救うけど、科学教はお前たちのような無宗教家や他宗教の信者まで、等しく救済する」

『わかったわかった。科学教は素晴らしいよ。そして君が見たという幽霊については、僕も肯定も否定もしないことにするよ。気が済むまでここにいればいい。さぁ、そんな話をしているうちに晩飯ができたぜ。今日はカレーだ。食うだろ?もちろんビールも冷えている!』

「おぉ、いいね。腹が減ってきたところだ。残さずいただくよ。」


 ・・・・・


「!!! っおい まさか、これ!!!」

『ん? あぁ、それね。今日はスーパーで特売だったんだ。うまいだろ?』

「味の問題じゃない! 俺が昨日会っちまった幽霊はノックを返してきたんだよ。つまり人間だったんだ。人間の幽霊だったんだよ」

『・・・?だから何だい?それがこのカレーと何か関係が?』

「だから!俺は幽霊にあって精神的にショック状態なんだよ。そんな俺によくこんなもの出せるなぁ!」

『こんなものって・・・肉彦のことかい? おいおい、じゃぁ豚を食べたら豚の幽霊に呪われるのかい?ジャガイモを食べたらジャガイモの幽霊に・・・』

「ダメなもんはダメなんだよ!俺は人間の幽霊に会ったんだ。これだけは食えない!!!」

『全く・・・わがままな居候だなぁ。100粒の米を食って稲の幽霊に呪われてしまえ!!!』

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