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1.桜は恋をする

 本編始まりました~。

 頑張って書いていこうと思いますので、少しでも続き読みたいなーと思っていただけたらブックマークや評価よろしくお願いします。

 桜が散り始める季節、鳥はさえずり花粉症はピークを迎える。

 新学期の始まる今日、高校二年になるおれ日向夏はいつもより少し早く家を出ていた。


 空から降り注ぐ眩しい日差しはおれを嘲笑っているようで気に食わない。去年も通った通学路は見慣れてしまったせいか、全然気持ちが高ぶらない自分がいる。


 それでもおれには少し気に入っている場所がある。


 交差点の角を右に曲がったそこは巷では有名な桜並木。

 毎年この季節になると地方からも一目見ようと観光客が押し寄せるほどのところだ。


 だが、今日は平日の朝方とあって誰一人としてその道にはいない。


 まるでこの桜たちを独り占めしているようだ。


 最高の特等席である道際のベンチに座って桜を見上げる。

 

 おれは桜が好きというわけではないが、どうしても懐かしく思えてくるのだ。

 自分の意志とは反してついつい訪れてしまう。

 

 ぼーっと、桜を見上げていたその時、突然にもそれは現れた。


「君は、さくらがすき?」


 今日は桜の散る春の日だ。年に一度、その木が満開に咲かせた花を一斉に解き放つ日。


「ボクはすきなんだ。さくら」


 一人称を『ボク』と名乗った彼女は唐突にもそんな(こと)をいった。


 足を弾ませて桜の木を見上げる彼女。本当に桜が好きなんだろう。

 

 だが彼女の目にはには涙が浮かんでいた。どうして泣いているのかそう聞きたかったが、あまり面倒なことは避けたいおれはただ一言だけ答えた。


「今は好きじゃない」

 

 おれは彼女から視線を桜の木に移すと、桜が踊っているかのように華麗に落ちていく。


「ふーん。おもしろい答え方をするんだね。前まですきだったのか、あるいはこれからすきになるみたいな。どっちかな~?」


「さあ、おれにもよくわからない」


「まあ、これから好きになるのかもね」

 

 ちょっといたずらな笑顔を見せた彼女はじゃねっと言い残してそそくさと歩いて行った。

 彼女のいた場所に少し強めのそよ風が吹き木の枝を揺らす。

 


 彼女の姿はまだ目に焼き付いている。


 短く切りそろえられた桃色の髪。丸くて可愛らしいその後ろ姿はなぜか懐かしい。

 ちいさく華奢な体は触れてしまえばなくなってしまいそうな。

 白く細やかな肌はどれだけ拡大しようと凹凸が認識できないほどきれいで。

 目頭に溜まったその涙が桃色の瞳をより一層輝かせる。

 

 泣いているはずなのに、彼女の笑顔は眩しくて眩しくて仕方がなかった。

 

 よくわからない状況だったが、おれは生まれてはじめて……いや、久しぶりに何かを美しいと思った。

 

 おれは桜の花を見て思う。


「たしかに、これは好きになってもおかしくないな」


 驚かされた、その桜吹雪に。今まで見たことのない量の花びらが描く空模様。枝一本一本のか細くもたくましい姿。包むようなピンクの海はおれの心をそよ風とともに奪っていった。

負けヒロインである青髪ちゃんは次回登場します。

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