第六話
「あーあ。これじゃ、お昼過ぎには到着できないな……」
「仕方ありませんよ。復旧するまで待つしかないですね」
野盗達をフィオナの警備隊に引き渡した後、今度は現場検証と列車の復旧作業が始まっていた。作業は数時間掛かるらしく二人は此処で足止めを食らうしかなかったのだ。
おまけにこの町は列車以外の公共交通手段は無く、車で移動しようにもアレン達の手元には車が無い。
本部に要請して車を調達出来ればいいのだが、此処からヴィオラまで車で行くとなると列車より時間がかかってしまい下手をしたら日が暮れてしまう。
いやがおうにもこうして復旧を待つしかないのだ。
二人揃って溜息を付いていると事件があった列車付近から甲高い声が聞こえてきた。
「ちょっと!状況報告遅いじゃないのよ!」
警備隊のシンボルである羽の付いた淵の広い帽子を被り、赤目・赤髪が良く目立ち遠くにいても気が付きそうな少女の声。
腕についている警備隊特有の星の階級の印からして恐らく警備隊の指揮官に値する人物なのだろう。
少女の声を聞き、部下と思われる男は苦笑いを浮かべ少女の元へと駆けつけてきた。
「で?状況は?」
苛ついているのか少女の声音は低く、腕を組んで忙しく指を動かしている。
そんな少女を宥めるように部下の男は今分かっている情報を簡潔に少女に伝えた。
「一部の車両が爆破によって損害を受けていますが、乗客は全て無事です」
「ふん、ったく……。最近の野盗も過激になってきてるわね。他の情報は?」
「いえ、まだ事情聴取や取調べをしていて……」
「まだ、済んでないの!?あれから一時間ちょっと経ってるでしょうが!」
もうしょうがないわね、と少女は顎に手を当て爆破によってぼろぼろになった車両を見つめた。
爆発の威力はあまり強くなかったんだろうが、所々大破してしまっているところがある。
これだけ所々車両が大破していれば修理する金額も計り知れない。
もしかしたら列車を買ったほうが安く付く場合もあるだろう。
少女は薙ぎ倒しになったドアを跨いで車内に入った。
床や壁、列車の座席などには銃で撃たれた形跡が残っている。
「よくもまあ、これだけドンパチやって誰一人怪我しなかったものね」
「そりゃ、そうだろうな。後ろの車両は僕達しか乗ってなかったし」
「そうね、それが不幸中の幸いって所かし……っ!?」
少女は後ろにいた人物に驚き即座に振り向いた。
死神と思わせるような黒いコートに包まれたソルドの組織服を着込んでいる青年が二人。
そのうちの黒髪の少年に少女は見覚えがある素振りを見せた。
「あーっ!あんたは!」
「やっぱりそうだったか……」
少女の方は嬉しそうに黒髪の青年――アレンを見つめる。
しかし、当のアレンの方は頭を抱え何処か鬱陶しそうに彼女を見つめていた。