第五話
「パートナーである以上お互い助け合うのが当たり前ですから」
剣を腰に収め、微笑を浮かべて当然のことだとばかりにいうウィル。
確かにそうだな、とアレンは軽く相槌を打ち、近距離用の短刀をコートの内側にある鞘に収めようとした時、突如、大きな音を立てドアが開いた。
どうやら先頭車両からリーダー格と思われる男がドアを蹴飛ばしアレン達がいる車両に入ってきたようだった。
「おい、お前らまだ集めてないのか……っ!」
男は最新型のライフル銃を持ったまま目の前に数人の仲間が倒れている様子をみて絶句してしまう。
「ああ、そうだったな。まだいたんだな」
アレンは面倒臭そうに再びコートを翻すと、ホルダーに入っている二丁拳銃を取り出して銃口を男のほうに向けた。ウィルもそれに倣い、腰につけてあった剣を構える。
「んな……!まさかこいつらをお前らが……!」
「だから?悪いのはお前らのほうだろう。いちいち面倒な質問するな。屑が」
「なんだと?なんならお前から先にあの世に送ってやるよ!」
男はそう叫ぶとライフル銃を構え、アレンに向かって打ち続ける。
アレンとウィルは横に避けるが流れ弾の一つがアレンの横をすり抜け、彼の頬から一筋の血が流れ落ちた。
それでもアレンは気にも留めず、流れ弾を避けながら男の下へと一目散に走り出す。
そして、男が弾を入れ替える一瞬の隙を見てライフル銃を掴み、身を翻し男の後ろへと回り込んだ。
いきなりの出来事に男は驚きを隠せなかったが、素早く男は後ろに回りライフル銃を構えて撃とうとした。しかし、引き金を引いても一向に弾は撃ちだされない。
「何故だ!何故、弾が出ないんだ!」
男の表情に焦りの色が見え始める。
引き金を何回も引くが弾は出てこない。
そんな男の様子を冷たい目で見据えアレンは言葉を紡ぎ始めた。
「なあ、安全装置って知ってるか?」
「安全装置!?ま、まさかあの掴んだ時に!?」
「そう。銃なんて僕の得意分野だから。安全装置を有効にすると出る弾も出なくなるんだよ。銃を扱うんだったらそのぐらいの知識ぐらい持ってなきゃ」
「このガキ……!」
男は冷静さを失ったのか銃を手放し素手でアレンに襲い掛かろうとした。
その寸前にウィルが背後から男の首元に手刀を銜え、男は地面に倒れる。
「ウィル、ナイス!」
「ほんと、なんで貴方と一緒に居たらいつもこんなにひやひやしなきゃならないんでしょう……」
額に手を当て溜息を付くウィル。
そんなウィルの姿を見てさっきの表情とは打って変わってアレンは楽しそうに微笑んだ。
「まあまあ、スリルな人生もいいんじゃない?」
「いい訳ありませんよ!」
「お前はもうちょっと頭を柔軟にしたほうがいいぞ?」
「あのね……」
その時、外から人々の声が聞こえ始めた。
窓の外から野次馬もちらほら見えるがその間を潜り抜け青いコートに身を包んだ人々がやって来ており、どうやら誰かの通報で、フィオナの警備隊がこちらに向かって来たらしい。
「そう言っている間に、警備隊が来たようだな……。こいつらの身柄引き渡し手伝ってくれ」
「……分かりましたよ」
ウィルは何処か不服そうな表情を浮かべて、アレンと共に野盗達を後から来た警備隊に引き渡す作業を始めたのだった。