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第三十五話

レクシメンスの合図と共に隣にいたエルザは何か一言唱えた後、地面に手をつけた。

その途端、彼らのポイントを線で繋ぐように閃光のような青白い光が発せられるとあるポイントが全て繋がり、大きく輝き始めると同時に彼らの体に異変が起こった。


「くっ……うわあああああああ!」


彼らはこの世のものとは思えない壮絶な痛みを感じながらも、アレンは赤色、ウィルは青色、ノエルは緑色のそれぞれの光を発しながら、その『何か』は彼らの体の中から出ていった。

光は彼らの体から各自出ていくと、中央部分へと集まり、地面から稲妻のような物が走り、光が一つに纏まった瞬間、中心とした場所から黒く血走った目を持った人型物体が現れた。


「これが、伝説に残る、世界を破滅する神『グラディウス』か……」


レクシメンスは己の望んだものに向かって嬉しそうに呟く。

――世界を破滅する神『グラディウス』

はるか昔、ある大魔導師が発動させ、一晩で世界が滅んだと言われる伝説の神である。

しかし、この後にある人物が世界を構築して出来たのが、今のこの世界と言われているが、この話は現代のこの世界ではお伽話として語り継がれているだけであった。

目の前の出来事に信じられない、と驚きの表情を浮かべながらも、中央で肥大化していく黒い物体と共にアレンの瞳は徐々に霞んでいく。

既に、ウィルとノエルは意識を失い倒れているようだった。


(――クソッ、こんな事で……)


中央にある黒い物体が最大に伸びきった所で、アレンは悔しい気持ちを立てながらも彼の意識は途絶えてしまった。


◇◆◇


彼ら三人が完全に意識を失い倒れたと同時に中央に現れた黒い人型物体は形を表し言葉を発した。


『鍵なる人物を開け、発動させたのはそなたか?』


血走っている赤く鋭い眼光を睨みつけ、ソレは低い声音で、彼らに問う。

彼らは逸る気持ちを抑えながらも、出現した神・グラディウスに答えた。


「そうだ。組み立てたのは私とエルザだ」


『我を呼び出したからには――覚悟はできているな?』


彼らが頷く姿を満足そうにグラディウスは見据えると黒い右手に力を集め始めた。

力に答えるかのように、辺りの物は嫌な物音を発し、立てかけてあった金属の棒は一瞬にして砕け散ってしまうと同時に術式を発動させた彼らとグラディウスを中心にして黒い闇が広がり始めた。


「もうすぐだ……。もうすぐしたら私の世界が完成する……」


独り言のように呟くレクシメンス。

その姿に少し離れて彼を見ていたアマリエは、苦笑いを浮かべながらも辺りを渦巻く環境に何処と無く違和感を感じ始めた。


(――何だ、この気配は)


女流剣士である彼女にとって、今、自らの体で感じた感覚に違和感を感じざる得なかった。

この闇を包みこむ為に先ほど発生した霧が原因だろうか?と思考を巡らせ、意識を集中させて気の流れを読もうとするが、霧にはそんな力は感じさせない。

寧ろ、彼らの望みに答えようと、快感に近いほどの力が発せられている。

では、何なのだろうか……と彼女はふと神が降り立っている中心部に視線を向けると――


(なっ……!)


アマリエは思わず目を見開かざる得なかった。

霧に覆われて、はっきりとは姿を映し出せていないが、神の他に何かがいる。

今、降り立っている神とアマリエ達以外ではエネルギーとなったアレン達三人しかおらず、さらに彼らも既にもぬけの殻であるため起き上がれるはずもない。

彼女の驚いた表情に気がついたのか、満足そうにグラディウスの行いを見ていたレクシメンス達は怪訝そうな表情を浮かべた。


「どうした?アマリエ」


あそこに何かいる、と一言いえばいいだけなのだが、声が出ない。

その声が出ない原因は己の中でいきなり渦巻いた寒気と恐怖からだったという事に彼女は気がついた。

幾度と無く強い敵と戦い抜いてきた彼女だが、今回ばかりは全く違っていた。


――この抉るような視線はなんだ。


先ほど戦ったアレンやウィルから向けられた殺気とは比べものにならないほどの憎悪を感じ、それは彼女ら三人に向けて完全に向けられていた。

辺りの霧は濃さを増しながらもその姿は段々とこちらに近づき、彼女らの視界の範囲に入った時にその姿は映し出されるが、此処でも彼らは一層、驚きを隠せずには居られなかった。


「アレン……だと!?」


彼らの目の前に立ち尽くしていたのは、先ほどあった体内エネルギーを全て奪われたはずのアレンであった。

なぜだ、とレクシメンスは動揺を隠しきれてはおらず、エルザに至っては全くの予想外だ、と口にしており、最初に彼の姿を見つけた彼女も驚きのあまり言葉を失ってしまっていた。


「良くもまあ、勝手にやってくれたもんだねぇ」


アレンの口から発せられる言葉に彼らは不審感を否めなかった。

いつもの冷たく見下ろした表情は変わらずだが、その口調は男が喋っているようではなく、まるで違う人物が喋っているかのような話し方だった。

アレンは先ほど、アマリエに飛ばされた剣を拾っておいたのか、軽く弄びながらもこちらに向かって歩き進める。


「レクシメンス、久しぶりね。十八年以来って所かしら?」


「き、貴様は何者だ……?」


目の前にいる人物はアレンではない。

いや、アレンの姿をした他の人物と言ったほうが適切だろうか。

レクシメンスは心の奥底でこの口調に覚えがある事を思い出していた。

だが、それを口にするのは憚れる。

何故なら、彼が考えている事は有り得ないことだからだ。

顔を引きつらせているレクシメンスの感情を読み取ったかのようにアレンは睨みつけ、話を続けた。


「何者?その表情を見る限り、誰だか分かってるみたいだけど?いい加減、気がついたら?」


嘘だ、と彼は首を振って否定するが、その姿をアレンは許さない。


「嘘じゃない。あんたを陥れるために、わざわざ冥界から戻ってきたんだ。感謝して欲しいぐらいだね」


レクシメンスの悲鳴に似た声が響きわたって木霊する。


「――何で、シェリー・ハロルドがいるんだ……!」


彼の目にはアレン・ハロルドの姿ではなく、消滅したはずのシェリー・ハロルドの姿が自然と目に焼き付いていた。


◇◆◇


(――っ?)


アレンが再び意識を取り戻すと、目の前に広げられている光景に違和感を感じさせる得なかった。

彼の視界の前にはアマリエたちが顔を引きつらせて固まっている。

しかし、体は別の誰かに操られているようで、己の意識を飛ばして体を動かそうとするが、何者かの意識によってそれは遮られてしまう。

何度かコントロールを試していると、ふと、彼の意識の中に何者かが話しかけてきた。


(アレン、目が覚めたか)


その声はとても優しく彼にとっては何処か懐かしい感じを覚えるような声だった。

聞き覚えがあるのに思い出せない。

誰……だっけ?と彼は心の中で思考を巡らせる。


(……まあ、十八年も時が経っていたら記憶もだいぶ薄れるか)


十八年。

そのキーワードに彼は何か気がついたようだ。

まさか、と彼は心の中で蠢いた感情に対し、必死に振り払おうとするが、語りかけてきた声はそれを肯定し始めた。


(そのまさか、だよ。久しぶりだな。アレン)


温和な声で彼は思わず、泣きそうになるが、体の制御は彼女に取られており泣くことは叶わない。

シェリー・ハロルド。

十八年前、彼をかばい死んだはずの彼女が此処にいる。

それだけでもにわかに信じがたい事だが、彼にとっては奇跡のような出来事だった。

何故、と問う前に彼女は彼に向かって語り始める。


(まあ、特殊な事情があってね……。今は冥界にあった私の魂をアレンの体に憑依させてる状態だ。それで、今は私がお前の体の制御を全て握ってる)


彼女は先ほどよりも声のトーンを落とし、深刻そうな口調で話す。


(詳細を話している時間はない。ただ、アイツらは世界を破滅させるための術式を組んで発動させてしまった。そして、今、私達が住んでる世界は破滅を迎えようとしている)


それを聞いた彼は信じられない、と言って驚きを隠せないようだ。

対する彼女は予想の範囲内だったのか何も言わずに話を続ける。


(信じるも信じないもお前の勝手だ。ただ、今は実際に起こっている。後、数時間もすれば世界は破滅に導かれ人類も全て消えてしまう。それを食い止めなければならない)


どうすればいい、と彼は彼女に問う。

彼女は彼に対し、一つの提案を持ちかけた。


(――あそこにいる神・グラディウスを打ち倒すしかない。しかし、グラディウスは破滅の神とあって通常の攻撃は効かない。だから、お前の体を使って私が持っている脈術の知識を使い、あいつを倒すしか無い)


分かった、とアレンは心の中で頷くと、彼女は安心した様子で呟いた。


(お前が物分りの良い弟で助かったよ)


さて、と彼女は彼に向かって言うとアレンの体を操って剣を握り直す。


(その前に……お前の腕前と成長の程も一緒に見せてもらおうか)


その合図と共に、まずはアマリエ達三人の動きを止めるために、剣を構えて走り始めた。

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