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第十七話

アレンとウィルが病院に収容されていた同時刻。

アレシアとの境に当たるダヴィド郊外のとある廃屋で二人の男女が話をしていた。

窓の外から見やっても遠くからでもあちこちで緊急用の明かり飛び交い、混乱しているアレシアの様子がよく分かる。

この廃屋は周りは程よい高さの森に囲まれている為、身を隠すには丁度よく、こうして監視する場所として使用されていた。


「んー、向こうもいい感じになってきてるわねぇ……。まあ、あのソルドの二人が出てきたのはちょっと想定外だったけど」


金髪を揺らしながら吸い込まれるような碧眼で外を見やりつつ、自分のわき腹に薬を塗って包帯を巻きながらそう呟く。

それを見ていた灰色の髪の男は手伝おうか?と手を差し出すが、女はことごとく拒否をした。


「いいわよ、このぐらい“フセヴォロド”でもつけておけば治るわ。

この薬は切り傷の治療薬として最速に細胞を活性化させて塞ぐ力のある薬なんだから。それより私は貴方のほうがよっぽど重症に思えるのだけれど?」


手を差し出した男の手や体は傷だらけになっていた。

服もぼろ雑巾のように擦り切れてしまっている。

だが、男は別に大丈夫だ、と女に背を向けた。


「ふん……、折角人が親切に手を差し伸べてやったというのに。このぐらい大丈夫だ。

それより、あの計画は順調に進んでいるか?」


「私を誰だと思ってるの?仮にも組織の重要四大幹部なのよ?順調に進んでなきゃおかしくなくて?」


「毎回のお前のその言い方が気に入らないが。まあいい、これからどうする」


「そうねぇ……。あの二人、邪魔はされたけど重要な人材だったりするのよね。それをむざむざと無駄にはしたくないし。まずは計画を第一段階から第二段階へ進める餌がいるわね」


女は少し痛みに顔を歪ませながらもきつく包帯を巻きつけた。

まだ完全には塞がっていないのか包帯には血が滲んでいる。


「その餌を持ってきて頂戴。私は別ルートで計画を実行させるエネルギーを持ってきて完成させるから」


「分かった。私はあの人の為に全力をつくしているような物だからな。餌となる人物を組織本部に連れてくる。またその時に向こうで落ち合おう」


男は身を翻しドアに手をかけて向こうの道へと歩き始めた。

そして自分が持っていた短刀を数本手に取った後、五芒星のになるよう一本ずつ地面に突き刺し目を瞑った。

刺したナイフの場所からは眩いばかりの光量が発せられ、地面に手をついた瞬間、そこに居た男の姿は完全に消えてしまっていた。

その姿を見送った彼女は少し唾を吐き捨て、忌々しそうに自分の愛剣を地面に突き刺してそれにもたれる。


「あの人に全力を尽くす……ねぇ。残念ね、貴方はあの人にそこまで信用されてなかったりするのに。それを知らないなんてなんて愚かなのかしらね」


女は大剣を突き刺したまま、妖艶な笑みを浮かべながら手元にあった鋏を弄ぶ。

そしてその鋏を横に投げて数回転させた後、壁に掛けてあった写真に突き刺した。

その写真にはさっきの男の姿が写っており、空いた白い部分には筆記体でセレス・クレメンテと書いてあった。


「次の仕事が終わったら……。貴方はもう用済みなのよ」


写真に向かってそう語りながら痛むわき腹を押さえながら椅子から立ち上がり

自分の愛用武器である大剣を背負った女はまるでこの仕事を楽しむかのように闇が広がる暗い森の中へと足を進めていった。


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