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異種族趣味の管理者【アドミニストレータ】  作者: てんとん
1章 導入:メンテナンス
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幕間 ワタシが地球に降りた日②

「どうしてあの子達は争わなかったんだろう?」


 ワタシは思考を巡らす。知性の低い動物ならば、食うか食われるか。自分よりも力の強いものが相手と分かれば平伏し、許しを請う。逆に相手が弱ければ、それを喰らうか従わせるか。どちらにせよ戦って物事を決める。


 だが人間と魔法使いは高度な知性を持っている。よく考え、行動に移すものだ。あの二つの個体は何を考えていたんだろう?


「あ~! 分かんないよ~!」


 分からない。でもなんだか、すごく楽しい。おかしいなあ、ワタシだってワタシの事が分かってない。何だってこんなことを思うのか。


 ——不意に、ぴんと来た。


「……ああ、これが『感情』かあ!!」


 何で楽しいと思うのか、それはきっとあの二人を見てるから。「楽しい」という思いに源泉はあれど、理解(あた)わず。

 なぜ感情があるのか?きっとその問いに正解はないのだ。

 何となく楽しい、嬉しい。もしかしたら、あの二人も何となくで動いたのかもしれない。何となく話して、何となくいがみ合った。そして何となく仲良く。

 

 ——ああ、なんて素晴らしい。

 「感情」とは種族間の壁さえも超えるのか。神であるワタシも揺さぶるとっても尊いモノ。

 「感情」がなぜ必要なのか?決まってる。


「無いとつまらないからだね」


 そう、きっとこれがワタシだ。"世界"の一柱?神?それはワタシを表すただの呼称。楽しい感情が何よりも大好き。面白いを何より欲する。

 それがワタシだ。


「君らには感謝しないといけないね」


 モニターを眺めながらその憧憬しょうけいに声をかける。魔法使いと人間は仲良く同じ宿屋の一室で会話をしていた。


「流石にあの勢いで街を飛び回ったら噂になるか~」


 魔法使いはサイレンの音に驚いて飛び回ったとき、多くの人に目撃されている。

 その様子を録画したものもいるらしく、テレビ局という情報発信の要所に持ち込まれるのも時間の問題の様だ。

 ワタシは人間を減らすために魔法使いを地球に転移させた。それは大正解だったと思う。何せこんなに楽しいんだから。

 でも同時に後悔もしている。彼女、固体名:ナタリーには家族や魔法界での暮らしがある。彼、固体名:青木あおき たくむは家を破壊された。

 転移の結果が招いたのは、二人にとって碌なもんじゃない。とっても申し訳ないな。


 これから先、きっとワタシは考える。自然災害を起こしたとき、そこに彼らの様な異種と絆を結べる個体がいたらどうしようと。

 やはり「感情」は仕事には不要なのだろう。ああ、悩ましいね。


 ……決めた。ナタリーちゃんを戻そう。

 ワタシが彼女の人生を歪めてはいけない。


 ナタリーちゃんを戻し、タクムくんの家も戻す。目撃者と当事者の記憶を消去して、元通り、かな。

 ごめんね、そう思いながらワタシはモニターに触れて、ナタリーちゃんをドラック&ドロップしようとした。


「……あれ?」


 操作、効かないんだけど??



「よし、キャラ作成は終わりっと~」


 すぐに神界へ戻るつもりではあるけど、一応"時間"にメッセージを送っておく。神という種族の視界には、メニューというものが表示されている。同種族間で通話等便利なことが出来るのだ。

 きっと過去に柱の誰かが科学を使って作ったのだろう。……さすがに"時間"でも使い方分かるよね?ワタシ以前一度説明してるし。


「行こうか」



 夜の町に、空から一筋の光が落とされる。星屑を鏤めたような柔らかなスポットライトの中、見えるは赤い美貌。こうして、神様が地上に降り立った。



『いらっしゃいませー』


 扉が左右に開き、出迎えてくれる。おお、これが自動ドアというものかな!

 ワタシは今、「こんびに」なるところに来ている。神界で日本の通貨を作って持ってきたので、買い物をしてみたい。

 早くノートpcを回収してナタリーちゃんを戻してあげたいところだけど、今はホテルの個室でお楽しみみたいだし野暮かなと思った。


「うーん、何を買おうかな」


 お菓子が陳列されている棚を見ていく。

 ワタシは地上に降りるのは初めてだが、降りたやつによると日本の食べ物はかなぁーり美味しいらしい。

 神界では食事が必要ないため、とっても楽しみなのだ。


「お、たけ〇この里とき〇この山」


 なんでも人間はこの二つのお菓子のどちらが好きかを巡って戦争を起こすらしい。かなり眉唾ものの話だけどね。


「この二つにしようか!」


 ワタシは両方のお菓子を持って、レジに並ぶ。


「ポイントカードはお持ちですか?」


 会計担当の人間の雌が話しかけてきた。なんだろう?それは?


「ぽいんとかーどって何だい?」

「ポイントカードを持っておられますと、当店でお買い物をされたときにポイントが溜まります。ポイントはお買い物の際に使用できるほか、持っておくと様々な特典がございますよ。お作りしましょうか?」

「じゃあ、よろしく頼むよ」

「それでは、ここにお名前、電話番号、住所をご記入ください」


 あ、不味いな。……う~ん、タクムくんには悪いけれど、住所と苗字を借りよう。

 ええと、ミカ……美花??なんでもいいや。青木 美花という架空の人間が出来上がっちゃった。


「ごめん、電話番号は記憶してなくてね」

「それでは後でホームページに飛ばれて電話番号をご登録ください。青木 美花様ですね……はい、どうぞ。こちらポイントカードになります」

「ありがとう」

「お会計394円になります」


 ワタシは無限収納(インベントリ)内から硬貨を出して、払う。それを店員は不思議そうな顔で見ていた。


「うん? 何かな?」

「……いえ、ただどこに仕舞われてるのかなと思って」


 無限収納(インベントリ)の正体は"空間"の柱に頼んで用意してもらったワタシ専用の空間だ。人間から見ると、物がいきなり現れたり消えたりするわけか。


「ええっと、そう、マジックだよ」

「ああ、なるほど」


 店員の女性は苦笑いしながら頷いた。うう……恥ずかしいな。神のくせに何にも知らないんだもんな、ワタシは。


「ありがとうございました~」


 声に見送られ、ワタシはコンビニを去った。



「青木君、結婚してたんだ……奥さん、美人さんだったなぁ」



 電柱の上まで浮いて登り、風に当たりながら二つのお菓子を食べ比べる。それにしても、暑いなぁ。神界はなんというか温度という概念がないから、新鮮だ。

 コンビニで飲み物を買っておくんだったなぁ、喉が渇いたよ。


「う~ん、き〇この山のほうがワタシは好きかな」


 どちらもとっても美味しい。き〇この山の方はチョコレートでできた傘の部分を舐め取りやすくて好きだ。食べていて楽しい。

 モニターが使えないので、『遠視サイト・ディスタンス』の魔法でタクムくんとナタリーちゃんを見る。二人はホテルから出るところみたいだ。


「ありゃ、雨?」


 雨が柔らかく肌を包む感覚がある。打ち付ける様な激しい雨ではないので、暫くその感覚を楽しんだ。



 タクムくんの言葉がナタリーちゃんに突き刺さる。ワタシもちょっとドキッとした。

 神は基本的に一人でなんでもできるから、他人に頼ることは少ないのだ。あんな言葉はワタシには不釣り合い。でも言われてみたいと、そう思う。

 これからあの二人と話せるのかと思うと、なんというか鼓動の音が煩くなる。ああ、ワタシは緊張をしているのか。初めてのことが多すぎて、感情がごちゃっとしている。

 でもたぶん、これでいいんだ。

 折角だから、楽しまないとね。


 ワタシは顔に笑顔を張り付けて、二人の元へと向かった。

ちなみに作者はたけ〇こ好きです。


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